
中国・四国の企業がダイバーシティ推進で地域経済を活性化させる方法——中国・四国で人事に取り組む方へ
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中国・四国の企業がダイバーシティ推進で地域経済を活性化させる方法——中国・四国で人事に取り組む方へ
「ダイバーシティって、大企業がやることでしょう?うちみたいな田舎の中小企業には関係ないですよ」。そう言ったのは、鳥取県のある製造業の人事担当者Jさんでした。
Jさんの反応は、中国・四国の中小企業では珍しくありません。ダイバーシティ(多様性)という言葉は、大企業のCSR報告書やESG経営の文脈で語られることが多く、地方の中小企業には「遠い話」に感じられるのは無理もない。
しかし、私がこれまで500社以上の企業の人事に関わってきた経験から言えるのは、ダイバーシティ推進は大企業のための取り組みではなく、むしろ人口減少が進む地方の中小企業こそ取り組む必要があるということです。
その理由はシンプルです。人口が減り続ける地域で人材を確保するためには、「今まで採用の対象にしていなかった層」に目を向ける必要がある。女性、シニア、外国人、障がい者、UIターン人材——こうした多様な人材を受け入れ、活かすことが、地域の企業が生き残るための現実的な戦略なのです。
中国・四国の「多様性」の現在地
中国・四国の企業における多様性の状況を整理します。
女性の活躍:女性の労働参加率は全国平均と大きな差はありませんが、管理職に占める女性の割合は低い水準にとどまっています。特に製造業・建設業では、女性が「補助的な業務」に限定されているケースが多く、能力が十分に活かされていない。
外国人材:技能実習生・特定技能の外国人労働者は、食品加工・水産業・農業を中心に増加しています。しかし、「労働力の穴埋め」として受け入れるケースが多く、「戦力として育成する」という視点が不足している企業が多い。
シニア人材:65歳以上の就業率は比較的高い地域ですが、多くは単純作業やパートタイムに限定されています。豊富な経験と知識を持つシニアの能力が、十分に活用されているとは言えません。
障がい者雇用:法定雇用率(2.5%)を達成している企業は、中国・四国でも半数に満たない状況です。「うちのような中小企業では障がい者雇用は難しい」という声が多いですが、業務の切り出しや環境整備を工夫することで、雇用の可能性は広がります。
なぜ「ダイバーシティ」が地域経済を活性化させるのか
ダイバーシティ推進と地域経済の活性化がつながる理由を3つの視点で整理します。
視点1:人材プールの拡大
人口減少が進む中、「30代の日本人男性」だけを採用ターゲットにしていては、人材は確保できません。女性・シニア・外国人・UIターン人材・障がい者——採用のターゲットを広げることで、人材プールが拡大します。
数字で見てみましょう。中国・四国のある県で、25〜39歳の男性就業者数が年間500人減少しているとします。一方、同じ県で60〜69歳のシニア就業者は増加傾向にあり、外国人就業者も年間100名程度増加している。「従来のターゲット」は縮小しているが、「新しいターゲット」は拡大している。この現実に目を向けることが、人材確保の第一歩です。
視点2:イノベーションの源泉
同質的なメンバーで構成されたチームは、発想が固定化しやすい。「ずっとこうやってきたから」という慣性が、変化への対応を遅らせます。多様なバックグラウンドを持つメンバーがいることで、「なぜそのやり方なのか?」という疑問が生まれ、業務改善やサービスのイノベーションにつながります。
岡山県のある食品メーカーでは、ベトナム出身の社員が「母国ではこういう味付けが人気」と提案したことをきっかけに、東南アジア向けの輸出商品を開発。新たな売上チャネルの開拓に成功しました。多様な人材がいることで、新しい市場への気づきが生まれた好事例です。
視点3:地域のブランド力向上
「多様な人材が活躍している地域」というイメージは、UIターン人材や外国人材を引きつける力になります。「あの地域は外国人にも住みやすい」「女性が活躍している企業が多い」——こうした評判が広がることで、地域全体の人材吸引力が高まります。
経営数字でダイバーシティの投資対効果を示す
ダイバーシティ推進を経営者に提案する際、「多様性は大事です」だけでは動きません。数字で示す必要があります。
たとえば、女性管理職を増やす取り組みについて。女性社員が管理職になれる環境を整備し、管理職候補3名を育成した場合のコストは、研修費用30万円+メンタリング体制の整備20万円=50万円程度。
一方、女性管理職が増えることで得られる効果。女性社員の離職率改善(離職コスト1名あたり200万円×改善分)、採用における差別化(「女性が活躍できる会社」として応募が増える)、多様な視点による意思決定の質の向上——これらを合算すれば、投資対効果は十分に見込めます。
外国人材の活用についても同様です。特定技能の外国人材を3名受け入れるためのコスト(日本語教育、住居手配、管理体制整備)が年間150万円だとして、3名の労働力が生み出す売上貢献が年間600万円以上であれば、投資として合理的です。
実践1:女性が活躍できる環境を整備する
中国・四国の中小企業で女性の活躍を推進するための具体的な取り組みを整理します。
育児と仕事の両立支援:時短勤務、フレックスタイム、急な休暇への柔軟な対応——これらの制度を「形だけ」ではなく「実際に使える」状態にすることが重要です。制度があっても「使うと周囲に迷惑がかかる」と感じる雰囲気があれば、制度は機能しません。管理職が率先して「制度を使っていい」というメッセージを発信することが大切です。
キャリアの「天井」を取り除く:女性社員が「ここまではいけるが、ここから先はない」と感じる「ガラスの天井」が存在していないか。管理職候補の育成プログラムに女性を積極的に含める、女性のロールモデルを可視化する——こうした取り組みが、女性のキャリア意識を高めます。
広島のある物流会社では、女性の倉庫管理者を育成するプログラムを導入し、3年間で女性管理職が0名から3名に増加しました。女性管理職のもとで働く女性スタッフの離職率が大幅に改善し、「この会社で長く働ける」という認識が広がっているそうです。
実践2:外国人材を「仲間」として受け入れる
外国人材の受け入れにおいて最も重要なのは、「安い労働力」ではなく「一緒に働く仲間」として迎える姿勢です。
日本語教育の支援、生活面のサポート(住居、銀行口座、病院の案内)、職場でのコミュニケーション支援、文化的な配慮(食事、宗教行事への理解)——これらを「コスト」ではなく「投資」として捉えることが重要です。
愛媛県のある水産加工会社では、フィリピン出身の社員5名に対して、週1回の日本語教室と月1回の文化交流イベントを実施しています。外国人社員と日本人社員が一緒にお好み焼きを作るイベントが好評で、「言葉は完璧でなくても、一緒に楽しめることがわかった」という日本人社員の声が印象的です。
実践3:シニアの経験を活かす仕組みを作る
シニア人材の活用において重要なのは、「年齢」ではなく「能力」で役割を設計することです。
60代後半のベテラン社員が持つ技術・知識・人脈は、組織にとって貴重な資産です。「若手の指導役」「品質管理のアドバイザー」「取引先との関係維持」——こうした役割を明確に設定し、適正に評価する制度があれば、シニアのモチベーションは維持されます。
島根県のある建材メーカーでは、定年退職した元工場長を「技術アドバイザー」として週3日勤務で再雇用しています。若手への技術指導と品質管理の最終チェックを担当し、「自分の経験がまだ役に立っている」と生きがいを感じているそうです。
実践4:障がい者雇用を「戦力化」の視点で考える
障がい者雇用は「義務」として捉えられがちですが、適切な業務設計と環境整備があれば、障がい者は十分に「戦力」として活躍できます。
業務の切り出し(特定の作業を標準化して担当してもらう)、職場環境の整備(バリアフリー化、作業動線の工夫)、支援者の配置(ジョブコーチの活用)——これらの工夫により、障がい者が安定的に働ける環境を作ることができます。
香川県のある印刷会社では、知的障がいのある社員3名が製本作業を担当しています。作業手順を写真付きのマニュアルにし、チェックリストで品質を管理する仕組みを整備した結果、品質基準を安定的に達成しているそうです。
ダイバーシティ推進の「抵抗」にどう向き合うか
ダイバーシティ推進には、社内からの抵抗が伴うことがあります。「外国人と一緒に働くのは不安だ」「女性に管理職が務まるのか」「障がい者雇用は負担が増える」——こうした声を無視するのではなく、正面から向き合うことが重要です。
抵抗の背景にあるのは、多くの場合「未知への不安」です。外国人と働いた経験がなければ不安を感じるのは自然なことです。その不安を解消するために、段階的な導入、成功事例の共有、当事者同士の対話の機会——こうした丁寧なプロセスが必要です。
「ダイバーシティは強制するものではなく、理解を深めるもの」——この姿勢で進めることが、長期的な定着につながります。
地域ぐるみのダイバーシティ推進
個別の企業だけでなく、地域全体としてダイバーシティを推進する取り組みも有効です。
外国人材の生活支援を自治体と企業が連携して行う、女性活躍推進の事例を地域の経営者団体で共有する、障がい者雇用のノウハウを企業間で交換する——こうした「地域ぐるみ」の取り組みが、個別企業の負担を軽減し、地域全体の多様性受容力を高めます。
中国・四国の企業が多様な人材を受け入れ、一人ひとりの力を活かす組織を作ること。それは、人口減少が進む地域において、経済を維持・発展させるための最も現実的な戦略だと、私は考えています。
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