中国・四国の中小企業で人事が経営参画する——社長との対話から始める人事変革
経営参画・数字

中国・四国の中小企業で人事が経営参画する——社長との対話から始める人事変革

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中国・四国の中小企業で人事が経営参画する——社長との対話から始める人事変革

「人事の仕事は、社長が決めたことを実行すること」——中国・四国の中小企業で人事を担当している人たちと話すと、こういった認識を持っている方が多い。採用・入社手続き・給与計算・社会保険の手続き——これらを「正確にこなすこと」が人事の役割として定義されている企業が、まだ多い。でも、人口減少・人材不足・事業承継・デジタル化という波が重なる今、中国・四国の中小企業にとって「人のこと」は経営の核心課題になっている。人事が経営参画するとはどういうことか、そのための最初の一歩は何か、という話をしたい。


1. 「人事が経営参画する」とはどういうことか

まず「経営参画」という言葉の誤解を解いておきたい。経営参画とは、「経営会議に出席する」「経営数字を読む」ことではない。もちろんそれもあるが、本質は「人事の視点から経営上の判断に貢献する」ことだ。

たとえばこういった場面が経営参画だ。

  • 「3年後に製造ラインを拡張する計画があるが、そのためにどんな人材が何人必要か」を経営者と一緒に試算する
  • 「離職率が上がっているが、それはどの部門で・どの年次で・なぜ起きているか」を数字で分析して経営に報告する
  • 「新規事業に必要なスキルセットを、現在の社員の育成で賄えるか、採用が必要か」を具体的に答える

これらはどれも「採用手続きをやる」「給与計算をやる」という業務ではない。事業の将来について、人の観点から考え、数字と根拠を持って経営に貢献する役割だ。

中国・四国の中小企業で、これを「やっている」人事担当者は少ない。でも「やりたい」「やらなければいけない時代になっている」と感じている人は増えている。


2. なぜ中国・四国の中小企業で人事の経営参画が難しいか

経営参画が難しい理由はいくつかある。中国・四国の文脈で整理すると、主に3つある。

①人事担当者が手続き業務で手一杯

採用・入退社手続き・給与計算・勤怠管理・社会保険——これらを1人か2人でこなしている企業は多い。日々の業務をこなすだけで精一杯で、「経営のことを考える余白がない」という状態だ。

これは業務の効率化と分担から変えるしかない。給与計算や勤怠管理はシステムへの移行で工数を圧縮できる部分がある。「今のやり方を維持したまま、経営参画もやる」は難しい。何かを手放すことが先に来る。

②社長が「人事は手続きをやる部門」と思っている

経営者が人事に期待しているのが手続き業務だけであれば、人事担当者が経営に意見を言おうとしても「なんで?」となる。経営者の人事への期待を変えることが必要だが、これは時間がかかる。

最初のアプローチとして有効なのは「データで話す」ことだ。「先月の採用状況をご報告します」という話から一歩進めて、「先月の採用状況ですが、応募数はこう推移していて、要因はこう分析しています。来期の採用計画に影響があるので、確認いただきたい点があります」という形で、人事データが経営判断に使えることを少しずつ見せていく。

③人事担当者自身が「経営の言語」を持っていない

「経営に参画したい」と思っていても、財務数字や事業戦略の理解が浅いと、経営者との対話が成立しにくい。「人件費率は何%が妥当か」「採用コストは何を基準に評価するか」「人材投資のROIをどう考えるか」——こういった問いに答えられる準備が、経営参画には必要だ。

これは一朝一夕には身につかないが、「経営数字と人事の関係」を意識して学ぶことで、徐々に言語が変わっていく。


3. 社長との対話を始める——最初の一手

中国・四国の中小企業で人事が経営参画するための、現実的な最初の一手は「社長と定期的に話す場を作ること」だ。

月に一度、30分だけでいい。議題は「人事的な観点から経営に報告・提案したいこと」で固定する。重要なのは、「こんなことが起きています」という報告だけでなく「こう考えます、こうしたいです」という提案を持って行くことだ。

最初は小さな提案でいい。「採用媒体をXからYに変えたいのですが、理由はこうで、コスト差はこうです」という話から始められる。提案を持っていく人事担当者に、社長はやがて「人事に聞くと答えが返ってくる」という期待を持ち始める。その積み重ねが、経営参画の土台を作る。

岡山の製造業の人事担当者の話だが、「毎月の社長面談で離職率のデータを持っていくことから始めた」という。最初は「へえ、そうか」という反応だったのが、半年後には「最近どこの部門が離職が多い?」と社長から聞かれるようになった。データを持って話し続けることで、社長の人事への期待が変わった。


4. 経営と人事をつなぐ「人事データ」の整備

経営参画のために人事担当者が持っておくべきデータは何か。特別なシステムがなくても整備できる基本的な指標を整理する。

採用関連

  • 応募数・面接数・採用数(月別・年別)
  • 採用コスト(媒体費用・工数)
  • 採用源別の採用数(ハローワーク・媒体・紹介など)

定着関連

  • 離職率(年間・部門別)
  • 在職期間の分布
  • 早期離職率(1年以内離職の割合)

生産性関連

  • 1人あたり売上・粗利(可能であれば)
  • 残業時間の推移
  • 欠勤率

これらを「月次で整理して社長に見せる」だけで、人事担当者のポジションが変わる。「なんとなく採用がうまくいっていない気がする」という感覚論から、「この3ヶ月で応募数が30%下がっており、媒体Xでの応募が特に減っている。原因として考えられるのは……」という対話に変わる。


5. 「人事課題」を「経営課題」として提示する

人事担当者が経営に参画するためのもう一つの重要なスキルは、「人事の問題を経営の言葉で語れること」だ。

悪い例:「最近、若い社員がすぐ辞めます。もっと育成に力を入れるべきだと思います。研修を増やしませんか?」

良い例:「過去2年間で3年以内離職率が15%から28%に上がっています。採用コスト換算で年間約300万円の追加コストが発生している計算です。原因として、入社後の業務期待とのギャップが最も多い理由として挙げられているので、入社前後のコミュニケーション設計と最初の3ヶ月の業務設計を見直したいと考えています。」

後者は数字があり、コスト意識があり、提案が具体的だ。「なんとなく問題だと思う」を「これは経営数字に影響する問題で、こうすれば改善できる」に変える——これが経営参画の言語だ。


6. 中国・四国の地域性と「人事が経営に言える空気」

中国・四国の中小企業の特徴として、経営者と社員の距離が近いことが挙げられる。これはチャンスでもある。大企業では経営参画するために何段階もの承認が必要だが、中小企業では「社長に直接話せる」環境があることが多い。

一方で難しさもある。「出る杭は打たれる」文化、「立場をわきまえる」という空気、「先代からのやり方を変えることへの抵抗」——これらは、特に長い歴史を持つ企業で見られる。「変えようとする人事が孤立する」という状況は珍しくない。

ここで重要なのは「変えようとする」ではなく「経営を一緒に考えようとする」姿勢だ。「現状は問題だから変えましょう」ではなく「5年後に事業を持続させるために、人材面でこういう準備をしておきたい」というフレームで話すと、受け取られ方が変わる。経営者も、人事も、同じ「会社の未来」を見ている仲間として対話できる関係を作ることが、経営参画の本質だ。


7. 経営参画は「地位」より「信頼」から始まる

「人事部長になれば経営に参画できる」と思っている人がいるかもしれない。でも実際には、役職より「信頼」が先に来る。

経営者に「この人が言うなら聞く」と思ってもらえるには、日々の小さな仕事の積み重ねが必要だ。手続きを正確にこなす、約束を守る、問題が起きたときに素早く報告する、データを持ってくる——これらの積み重ねが「信頼」を作り、「この人に人事のことを任せたい」という経営者の判断につながる。

信頼ができたうえで、「もっと経営に関わりたい」「事業計画に人材計画を連動させたい」という提案をすると、受け入れられやすくなる。焦って「経営参画させてほしい」と主張するより、信頼を積み上げながら自然に関わる範囲を広げていく。これが中国・四国の中小企業での現実的なアプローチだ。


まとめ

中国・四国の中小企業で人事が経営参画するための道は、特別な権限や役職からではなく、データを持って社長と対話することから始まる。月1回30分の社長面談、採用・定着・生産性の基本データの整備、「人事の問題を経営の言語で語る」スキル——この3つが経営参画の入口だ。人事が経営に近づくことで、企業の人材戦略は変わる。


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