中国・四国の企業が人事と現場の「壁」を壊す方法——中国・四国で人事に取り組む方へ
組織開発

中国・四国の企業が人事と現場の「壁」を壊す方法——中国・四国で人事に取り組む方へ

#エンゲージメント#採用#評価#研修#組織開発

中国・四国の企業が人事と現場の「壁」を壊す方法——中国・四国で人事に取り組む方へ

「人事が何をやっているか、現場はまったくわかっていません。逆に、現場が何に困っているか、人事もわかっていない。お互いに不信感がある」。山口のある製造業の経営者が、こう本音を打ち明けてくれました。

その企業は従業員130名。人事部門は3名体制で、採用、労務管理、評価制度の運用を担当していました。しかし、現場の管理職からは「人事は現場を知らない」「的外れな制度を作る」「相談しても動いてくれない」という声が上がっている。一方、人事部門からは「現場は人事の仕事を理解してくれない」「情報を出してくれない」「制度を運用してくれない」という声が上がっている。

人事と現場の間に「壁」がある——この状況は、中国・四国の中小企業で非常によく見られます。そして、この壁は放置すると、組織全体のパフォーマンスを確実に低下させます。

私はこれまで500社以上の企業の人事課題に向き合ってきましたが、人事と現場の壁は「どちらが悪い」という問題ではなく、「組織の構造」の問題だと考えています。この記事では、中国・四国の企業が人事と現場の壁を壊すための方法を、経営数字の視点から考えていきます。


なぜ人事と現場に壁ができるのか

理由1:人事が現場の業務を知らない

多くの中小企業の人事担当者は、採用や労務管理の「事務処理」に追われ、現場の業務を理解する機会が少ない。製造ラインで何が起きているか、営業がどんな課題を抱えているか——こうした情報が人事部門に入ってこない。

結果として、現場の実態を知らないまま制度を設計する。「この評価制度は現場の仕事に合わない」「この研修は役に立たない」——現場から見ると、人事の施策が「机上の空論」に映ってしまう。

理由2:現場が人事の役割を理解していない

現場の管理職にとって、人事は「給与計算と採用をやっている部署」としか認識されていないことが多い。人事が「組織開発」「人材育成」「エンゲージメント向上」といったテーマに取り組もうとしても、「そんなことより目の前の人手不足を何とかしてくれ」と言われてしまう。

理由3:コミュニケーションの不足

人事と現場の管理職が直接対話する機会が限られている。連絡はメールや通達が中心で、「なぜこの制度を導入するのか」「現場の声をどう反映したのか」が伝わっていない。

理由4:利害の対立

人事は「全社最適」を考え、現場は「部門最適」を考える。人事が「全社的な配置転換」を提案しても、現場は「うちのエースを取られたくない」と抵抗する。この利害の対立が、壁をさらに厚くします。

理由5:人事の「上から目線」

人事が「制度を作る側」、現場が「制度に従う側」——この上下関係の構図が、壁の一因になっている場合がある。人事が「この制度を運用してください」と一方的に通達するだけでは、現場の納得は得られません。


壁がある状態の経営インパクト

人事と現場の壁は、組織全体にどんな影響を与えるのか。

制度の形骸化:人事が作った制度が現場で運用されない。評価制度があっても適切に運用されず、研修制度があっても活用されない。制度の設計・運用にかけたコストが無駄になります。

採用のミスマッチ:人事が現場のニーズを正確に把握していないと、「現場が求めていない人材」を採用してしまう。ミスマッチによる早期離職が発生し、採用コストが浪費される。

社員のエンゲージメント低下:「人事に相談しても意味がない」「現場の声は届かない」——こうした感覚が広がると、社員のエンゲージメントが低下します。

人事施策の効果が出ない:人事が取り組む施策(育成、組織開発、制度改革など)は、現場の協力がなければ効果が出ない。壁がある状態では、どんな施策も「半分の効果しか出ない」ことが多い。

広島のあるサービス業(従業員100名)では、人事が導入した新しい評価制度が現場でほとんど運用されていなかった。管理職の70%が「評価シートは形式的に書いているだけで、実質的なフィードバックはしていない」と回答。制度設計に6ヶ月、外部コンサルタント費用300万円を投じたにもかかわらず、効果はほぼゼロでした。


壁を壊すための具体的なアプローチ

アプローチ1:人事が現場に「行く」

壁を壊す第一歩は、人事担当者が現場に足を運ぶことです。

現場巡回:週に1〜2回、人事担当者が製造ラインや営業部門を訪問し、管理職や社員と会話する。「何か困っていることはありますか」「人事に対してリクエストはありますか」——こうした対話を日常的に行う。

現場体験:人事担当者が、現場の業務を一定期間体験する。製造業なら1週間ラインに入る。営業なら顧客同行する。「百聞は一見にしかず」で、現場の業務を肌で感じることで、制度設計の精度が格段に向上します。

現場ミーティングへの参加:現場の定例ミーティングに人事担当者がオブザーバーとして参加する。現場がどんな課題を議論しているかを直接知ることができます。

岡山のある化学メーカー(従業員110名)では、人事担当者が四半期に一度、1日間の「現場体験」を実施しています。工場のライン作業、品質検査、出荷業務を実際に体験する。この取り組みを始めてから、「人事は現場を知らない」という声が明らかに減少しました。

アプローチ2:現場を人事の「パートナー」にする

人事が一方的に制度を作り、現場に展開する——このモデルを転換します。

制度設計への現場の巻き込み:評価制度、研修制度、人事制度の設計段階から、現場の管理職をメンバーとして参加させる。「人事が作って現場に降ろす」のではなく、「現場と一緒に作る」。

人事委員会の設置:経営者、人事、現場管理職で構成する「人事委員会」を月1回開催する。人事課題の共有、制度の改善提案、現場の声のヒアリング——部門を横断した対話の場を定例化する。

現場管理職の「人事リテラシー」向上:管理職に対して、「評価の考え方」「フィードバックの方法」「労務管理の基礎」「採用面接のスキル」——人事関連のリテラシーを高める研修を実施する。管理職が人事の考え方を理解することで、制度の運用精度が向上します。

アプローチ3:情報の透明性を高める

人事施策の「なぜ」を説明する:新しい制度を導入する際、「何をするか」だけでなく「なぜするか」を丁寧に説明する。「この制度は、現場のこういう課題を解決するために導入する」「この研修は、現場からこういう要望があったために企画した」——背景と目的を共有することで、現場の理解と協力が得られやすくなります。

人事データの共有:採用状況、離職率、エンゲージメント調査の結果、研修の実施状況——人事が持っているデータを、現場の管理職と共有する。「自部門の離職率は全社平均と比べてどうか」「自部門のエンゲージメントスコアはどの程度か」——こうした情報が管理職に共有されることで、人事課題が「人事部門の課題」ではなく「自分たちの課題」として認識されるようになります。

現場の声の見える化:社員アンケートやヒアリングで集まった現場の声を、経営者や人事にフィードバックする仕組みを作る。「現場の声が経営に届いている」という実感が、現場の信頼を生みます。

アプローチ4:共通の目標を持つ

人事と現場が「同じ目標」に向かっている感覚を持てるかどうかが重要です。

採用目標の共有:「来期は営業部門で3名、製造部門で5名を採用する」——この目標を、人事と現場の管理職が共有する。採用は人事だけの仕事ではなく、現場と協力して達成する共通の目標として位置づける。

離職率の改善目標:「今期の離職率を前期比○%改善する」——この目標を、人事と現場の管理職が共有する。離職の原因が現場のマネジメントにある場合、現場も改善に取り組む。

エンゲージメント向上の目標:エンゲージメントサーベイのスコアを部門別に測定し、各部門の管理職が自部門の改善に責任を持つ。

アプローチ5:HRBP(HRビジネスパートナー)の考え方を取り入れる

HRBP(HRビジネスパートナー)とは、人事担当者が特定の事業部門に「パートナー」として深く関与し、その部門の人事課題を経営視点で解決する役割のことです。

大企業のように「専任のHRBP」を置くのは中小企業では難しい。しかし、「人事担当者が特定の部門の担当を持ち、その部門の管理職と定期的にコミュニケーションを取る」という仕組みは、中小企業でも実現可能です。

人事担当者3名であれば、「Aさんは製造部門、Bさんは営業部門、Cさんは管理部門」と担当を割り振る。担当部門の管理職と月1回の面談を行い、部門固有の人事課題を把握・対応する。


壁を壊した後に生まれるもの

人事と現場の壁を壊すことで、組織にどんな変化が生まれるか。

制度の実効性が向上する:現場の実態に即した制度が設計され、現場が納得して運用する。制度が「形だけのもの」から「使えるもの」に変わります。

採用の精度が上がる:現場のニーズを正確に把握した採用活動ができ、ミスマッチが減少する。

問題の早期発見:現場で起きている問題(離職の兆候、ハラスメント、メンタルヘルスの悪化)が、人事に早く伝わるようになる。

組織の一体感が高まる:「人事は味方だ」「人事に相談すれば何とかしてくれる」——現場からこうした信頼が寄せられるようになると、組織全体の一体感が高まります。


まとめ

人事と現場の壁は、多くの企業に存在する「見えない経営課題」です。壁があることで、制度が形骸化し、採用がミスマッチし、社員のエンゲージメントが下がり、人事施策の効果が半減する。

壁を壊すためには、「人事が現場に行く」「現場をパートナーにする」「情報の透明性を高める」「共通の目標を持つ」「HRBPの考え方を取り入れる」——これらのアプローチを組み合わせて、地道に取り組む必要があります。

大切なのは、人事が「管理する側」から「支援する側」に意識を転換すること。そして、現場が「管理される側」から「人材マネジメントの当事者」に意識を転換すること。この双方向の変化が、壁を壊す鍵です。

中国・四国の企業が、人事と現場の壁を壊し、「人材」という共通テーマで一つになっていく。その取り組みが、組織全体の力を最大限に引き出すことにつながると考えています。

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