中国・四国の中小企業における採用の課題と打ち手——中国・四国で人事に取り組む方へ
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中国・四国の中小企業における採用の課題と打ち手——中国・四国で人事に取り組む方へ

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中国・四国の中小企業における採用の課題と打ち手——中国・四国で人事に取り組む方へ

「地方だから仕方ない」という言葉を、あなたは何度聞きましたか。

広島市内のある自動車部品メーカーで、人事担当を務めているAさんから聞いた話です。毎年春に新卒採用の内定者が確定するたびに、ほっとするのも束の間、夏頃になると「やっぱり都市部に出ようと思う」という辞退の電話が1〜2件かかってくる。何年も続くこのサイクルに、Aさんはいつしか慣れてしまっていた。「どうせ地方だから」という言葉が、自分の中にも沁みついていることに気づいたのは、採用担当になって3年目のことだったと言います。

中国・四国の企業で人事に取り組む方が直面する課題は、単純な人材不足ではありません。鉄鋼・造船・製造・農業・観光業を基盤としながら、高齢化と人口減少が進む地域特性があります。こうした地域特有の文脈の中で、採用課題をどう考えるか——それが問われています。


中国・四国ならではの採用環境を直視する

山陰山陽・四国4県の企業で人事に携わる方には、都市部の企業とは異なる「文脈」があります。広島・岡山は製造業と物流の集積地ですが、島根・鳥取・高知といった県では若年人口の流出が都市部より深刻です。愛媛の水産・食品加工、徳島のLED・IT関連産業、香川の観光・サービス業——それぞれの地域に固有の産業構造があり、採用市場の様相はかなり異なります。

たとえば、愛媛県の柑橘系食品加工業では、収穫シーズン(10〜12月)に向けた短期労働需要が高まる一方、通年雇用の正社員採用は年間を通じて厳しい状況が続いています。求職者の多くは安定した雇用を望む一方で、地域に残るインセンティブが見えにくい。こうした繁閑サイクルと求職者行動のズレを理解しないまま、大手転職サイトに求人を掲載しても効果は限定的です。

「都市部でうまくいっている方法をそのまま地方に持ち込む」のではなく、「この地域ではどう考えるか」というオーナーシップを持つこと。それが、中国・四国で人事のプロとして活躍するための第一歩です。


なぜ採用課題が今「経営課題」なのか

採用難・人材不足が加速する中、中国・四国の中小企業にとって採用課題は「後回しにできない経営課題」になっています。

経営者から「何とかしてほしい」と言われても、明確な打ち手が見えない——そんな状況に置かれている人事担当者が多い。でも、課題の本質を見誤ると、いくら時間とお金を使っても解決につながりません。

採用コストの目安として、中途採用1名あたり80〜150万円(求人広告費・エージェント手数料・選考工数など)がかかると言われています。そして万一、入社後1年以内に離職された場合、その損失は年収の1.5〜2倍に相当するとも試算されます。年収400万円の中途採用者が早期離職すると、採用コスト100万円+戦力化コスト+代替採用コストで、総損失が600〜800万円規模になることも珍しくありません。

こうした数字を前にすると、「とりあえず求人を出す」という行動が、いかにコストリスクを抱えているかが見えてきます。採用課題において最初に問うべきは、「何のための施策か」です。事業目標から逆算して、どんな人材が何人必要か、どんな組織状態が求められるか——この大きな問いを持ち続けることが、打ち手の精度を上げます。


中国・四国での採用が難しい本当の理由

よく言われるのは「地方は給与が低いから」ですが、それだけではないというのが現場で人事をやっている方の実感ではないでしょうか。

理由1:「この会社でキャリアが描けるか」という不安

地方中小企業への転職を考える人が躊躇する理由のひとつは、「5年後・10年後のキャリアが見えない」という不安です。都市部の大企業であれば、ある程度キャリアパスが体系化されている一方、中小企業では「なんとなく上が詰まっている」「昇進のタイミングが不透明」という状況が続きがちです。採用の問題である以上に、組織設計・評価制度の問題が採用力に直結している場合があります。

理由2:情報発信量の圧倒的な差

求職者がGoogleやIndeedで検索したとき、都市部の企業はブログ・SNS・採用サイトなどを通じて豊富な情報を発信しています。一方、中国・四国の中小企業では、公式サイトのリニューアルが10年以上止まっている、採用ページに社員の顔が出ていないというケースも多い。求職者は「情報がない会社は怪しい」と感じます。採用広報の整備は、求人票を出す前の地盤づくりです。

理由3:地域の「人が動かない」構造

山陰地方などでは、隣の市に転職するだけでも「帰りが遅くなる」「親の反対がある」という声が聞かれます。地域内の転職マーケットが小さいため、求人を出しても同じ顔ぶれしか応募がこない——これは採用施策の問題ではなく、地域の人材流動性の構造的な問題です。UIターンも含めた広域からの採用戦略を組み合わせることで、この壁を乗り越えるヒントが見えてきます。


実践に向けた4つの視点

1. 経営数字から逆算する採用設計

人事施策は「やって当然」ではなく「この施策で事業がこう変わる」という仮説を持って設計する。採用1名あたりの費用対効果を試算すること自体が、経営者との会話の質を変えます。「今期3名採用が必要」という話をするとき、「3名採れると売上にどう影響するか」「採れなかった場合の機会損失はいくらか」という数字感覚を持って話す人事と、そうでない人事とでは、経営者が付き合い方を変えます。

2. 採用チャネルの地域最適化

大手求人サービスは確かに母集団形成には有効ですが、中国・四国の中小企業では地域密着型のネットワーク活用が見逃せません。ハローワークとの連携強化、地元大学・高専との産学連携、地域の商工会・業界団体を通じた口コミ採用——これらを組み合わせることで、広告費をかけずに質の高い採用につながった事例は多くあります。広島市内の食品機械メーカーでは、地元工業高校の担任教師との長年の信頼関係から、毎年安定的に新卒採用を続けることができていると聞きます。

3. 採用広報は「採用する前」から始まる

採用サイトを整える、社員インタビューを掲載する、社長がSNSで事業の想いを語る——こうした地道な情報発信の積み重ねが、求職者の「ここを受けてみようかな」という気持ちにつながります。採用広報は、求人票を出す「前の仕込み」です。特にUIターン採用を狙う場合、地元出身者が「地元に帰って働ける選択肢として、あの会社が候補に入った」と感じてもらうまでの情報接点が重要になります。

4. 外部知見との接続で打ち手を広げる

地方の人事担当者の多くは「情報の孤立」に悩んでいます。同業他社の事例、最新の採用トレンド、法改正の動向——これらへのアクセスが限られている中で、自社だけで考え続けると視野が狭くなりがちです。人事のコミュニティや勉強会に参加し、同じ課題を持つ仲間とつながることで、「自社では当たり前だと思っていたことが、実は改善できる」という気づきが生まれます。


よくある失敗パターンとその背景

採用に力を入れているつもりなのに結果が出ない——その場合、以下のいずれかに当てはまっていることが多いです。

「とりあえず求人票を出す」という習慣:採用の目的・ターゲット像・評価基準が曖昧なまま求人を掲載してしまう。結果として応募者のスクリーニングに時間がかかり、採用担当者の工数が増える一方で精度は上がらないというサイクルに陥ります。

面接が「確認作業」になっている:事前に「どんな人を採るか」の合意なく面接に臨む場合、面接官ごとに評価軸がバラバラになります。「なんとなく感じが悪かった」「声が小さかった」という主観的な印象が不採用理由になることもある。採用基準の明文化と面接官トレーニングは、採用の質を上げる地味だが重要な取り組みです。

内定後フォローの手薄さ:内定を出してから入社まで、特に何もしない——これが若手人材の辞退を招きやすいパターンです。内定者に対して「どんな仕事を担当するか」「入社後の最初の3ヶ月のイメージ」を丁寧に伝える機会を設けるだけで、辞退率が下がったという事例は各地にあります。


採用と定着は一体で考える

採用がうまくいっても、定着率が低ければ意味がありません。中国・四国の中小企業では、採用と定着を「別の担当者が別々に考えている」ケースがよくあります。採用担当が「入ってもらうこと」に集中し、現場マネジャーが「使えるかどうか」を判断するという分業が、新入社員の早期離職を生み出す土台になっていることがあります。

岡山県内のある物流会社では、採用した若手が毎年5〜6名のうち2〜3名は1年以内に離職するという状況が続いていました。人事担当者が現場にヒアリングしたところ、「配属後の仕事の説明が不十分」「先輩社員が忙しくて質問しにくい」「自分が何のために働いているのかわからない」という声が出てきました。採用広告の内容と実際の仕事内容が乖離していたことも判明しました。

こうした問題は、採用選考の場で「この会社に入るとどんな仕事をするか」を具体的に伝えていなかったことが根本原因でした。「採用で正直に伝えると応募が減るかもしれない」という不安から、良い面ばかりを強調していたわけです。しかし、実態と異なる情報で採用した結果が早期離職であれば、長い目で見るとコストは数倍になります。

採用広告の内容・面接での説明・入社後の仕事の実態、この3点を整合させることが、定着率改善の第一歩です。


地域の求職者が重視する「見えにくい価値」

給与や待遇以外で、中国・四国の求職者が企業選びで重視しているポイントを知ることも、採用力向上のヒントになります。

家族・親の近くにいられる:特に30代以降の求職者は、親の介護や子育てを見越した職場選びをする傾向があります。「残業が少ない」「急な休みが取れる」といった柔軟性が、大企業の高い給与より魅力的に映ることがあります。

地域のコミュニティとのつながり:「この会社で働くことで、地域に何か貢献できる」という感覚は、UIターンを検討している人材にとって重要な要素です。地元の祭りや行事に従業員が参加している様子、地元学校とのつながりなど、「地域に根ざした企業文化」を見える化することが採用広報の強みになります。

成長できる仕事かどうか:中小企業は大企業に比べ、早い段階からさまざまな業務を任せられることが多い。「3年で一通りの業務を経験できた」という声は、後から振り返れば大きなアドバンテージです。これを採用の段階でしっかり伝えている企業は、意外と少ない。


採用力を「組織の体力」にする

採用がうまくいく会社には、共通した特徴があります。それは、人事担当者一人が頑張っているのではなく、「採用は経営の仕事である」という認識が経営者・現場マネジャー・先輩社員にまで浸透していることです。

面接に出てくる社員が「うちの会社はいいところだ」と自信を持って語れる状態、内定者からの質問に現場の担当者が自分の言葉で答えられる状態——これは採用広報の問題ではなく、日頃の組織文化の問題です。

逆に言えば、採用に課題を抱えている会社では、組織の内側を覗くと「社員が自社に誇りを持てていない」「評価に不満を抱えている」「仕事の意義が見えにくい」といった別の課題が隠れていることがよくあります。採用力の向上は、採用施策だけで完結するものではなく、組織全体の状態を整えることと表裏一体です。

そう考えると、採用担当者の仕事は「求人票を書いて面接をする」だけではありません。現場の声を拾い上げ、評価制度や育成の課題を経営者に伝え、組織の状態を継続的に改善していく——その全体像を見渡す視点こそが、地方中小企業の人事が持つべき力だと思います。


「事業を伸ばす人事」を中国・四国から

中国・四国という地域で人事に取り組むことは、決してハンデではありません。地域に根ざした事業への深い理解、経営者との近い距離感——これらは都市部の大企業では得にくい経験です。

採用課題は、突き詰めると「この会社がどんな未来を描いているか」「そのために誰と働きたいか」という問いに行き着きます。その問いに真剣に向き合い、事業のストーリーを採用に落とし込んでいく仕事は、単なる手続きではなく、経営そのものです。

中国・四国の地で、その経験と思考の積み重ねが、やがて「この地域の産業を人事から変えた」という実績につながっていく。そう感じている人事担当者が、少しずつ増えてきています。


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