中国・四国の企業が採用難を乗り越える——人口減少地域でも「人が集まる企業」の作り方
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中国・四国の企業が採用難を乗り越える——人口減少地域でも「人が集まる企業」の作り方

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中国・四国の企業が採用難を乗り越える——人口減少地域でも「人が集まる企業」の作り方

中国・四国地方の人事担当者と話すと、必ずといっていいほどこんな言葉が出てくる。「求人を出しても全然来ない」「面接まで来てくれたと思ったら、来なくなった」「広島や岡山に人が吸われてしまう」。人口が着実に減り続けるこの地域で、採用は本当に難しい。でも、同じ地域の中でも「なぜかここには人が来る」という企業が確かに存在する。その差は何か。採用の手法よりずっと手前にある、人事の構えの話をしたい。


1. 「東京の採用メソッド」が通じない理由

採用コンサルタントや求人媒体の営業が持ち込む手法は、基本的に首都圏・大都市圏の成功事例をベースにしている。「求人票のキャッチコピーを磨け」「インスタを使え」「採用動画を撮れ」——どれも間違いではないが、中国・四国の企業にそのまま当てはめると、しばしば的外れになる。

なぜか。この地域では、求職者の意思決定に「人」と「口コミ」が占める比重が、都市部より圧倒的に大きいからだ。

たとえば島根県の製造業で、SNS採用を強化したものの応募ゼロだったという話を聞いた。調べてみると、地元の40代・50代が主な求職層なのに、発信内容が若者向けのポップなトーンだった。地域の求職者層を把握せずに手法だけ導入しても、空振りになる。

都市部では「情報を出せば人が来る」ロジックが成り立ちやすい。ところが中国・四国の中山間地域や島嶼部では、情報よりも「あそこの会社、どうなの?」という近所や知人のネットワークが強く機能する。地元の信用こそが採用媒体になっているのだ。


2. 採用難の「本当の原因」を数字で見る

感覚で語っていても前に進まない。まず現状を数字で整理してほしい。

生産年齢人口の推移を確認すると、中国地方(鳥取・島根・岡山・広島・山口)の人口は2020年時点で約755万人。国立社会保障・人口問題研究所の推計では、2045年には約620万人まで減少するとされている。約17%の減少だ。四国(徳島・香川・愛媛・高知)はさらに深刻で、同期間に約25%の減少が見込まれる。

これは「採用が難しくなる」ではなく、「採用の対象となる人の絶対数が物理的に減る」という話だ。

そのうえで、企業側の視点も加えてほしい。自社の採用コストをきちんと計算している企業はどれくらいあるだろうか。求人広告費、面接にかけた工数、入社後研修コスト、試用期間中の人件費——これらを足すと、1名採用あたり50〜100万円を超える企業は珍しくない。しかも早期退職が起きれば、その投資はほぼ消える。

採用難を「どうやって採るか」だけで考えると、コストは膨らむ一方だ。「採りやすい状態」を作るために何をするか、という発想の転換がいる。


3. 「人が集まる企業」に共通する3つの特徴

同じ中国・四国の中でも、求人を出すと応募が集まる企業には、共通するパターンがある。

特徴①:地域への「還元」が見える

岡山県内のある食品メーカーは、地元の農家と原材料の契約栽培をしていることをオープンにしている。「地元で働く意味」が求職者に伝わる。単に「安定した会社」という訴求ではなく、「この会社に入ると地域の中で自分が何をしているかが見える」という感覚が生まれる。これは都市部の企業にはなかなか出せない強みだ。

特徴②:既存社員の「リアルな声」が出ている

求人票の会社説明より、「社員インタビュー記事」の一言のほうがはるかに信頼される。とくに中山間地域・離島を含む地域では、「あの人が働いている会社なら」という個人の信頼が組織への信頼につながる。Webに掲載するのが難しければ、ハローワークの求人票に「社員の声(実名)」を一行入れるだけでも違う。

特徴③:入社後のイメージが具体的

「アットホームな職場」「風通しの良い社風」は求職者に何も伝えない。「入社3ヶ月でどの業務を担当するか」「1年後に何ができるようになるか」を書いている企業は、候補者の事前期待とのズレが少ないため、早期離職が起きにくい。これは採用コストの回収スピードにも直結する。


4. 中国・四国特有の採用チャネルの使い方

「どこに求人を出すか」の話もしておく。媒体選定の前に前提として伝えたいのは、この地域では「チャネルの数より、一つのチャネルの深度を上げる」ほうが効果的だという点だ。

ハローワークは中国・四国では今でも主力チャネルだ。ただし窓口担当者との関係構築が重要で、「どんな人を求めているか」を言語化して伝えておくと、担当者が推薦してくれるケースがある。大手求人媒体の予算を削っても、ハローワーク対応に工数をかける価値はある。

UIターン採用は、松江・高松・松山などの地方都市において、地域出身の都市圏在住者への訴求として有効だ。ただし「UIターン歓迎」と書くだけでは動かない。「なぜ地元に戻れるのか」「家賃・保育所・実家との距離」といった生活文脈を含めた情報提供が機能する。

**社員紹介(リファラル)**は採用質が高い。ただし「紹介して」と言うだけでは動かない。インセンティブの設計と、「紹介できる社員」を増やすこと(つまりエンゲージメントを上げること)が先に来る。

工業高校・農業高校などの学校採用は、製造・農業・水産業において今でも重要なルートだ。学校との関係は一朝一夕に作れないが、インターンシップや出前授業から始めると数年で関係が構築できる。


5. 採用と定着は表裏一体——離職率を数字で管理する

採用に苦労している企業の多くは、「採用」と「定着」を別のテーマとして扱っている。でも現実には、離職率が高い企業ほど採用コストが膨らむという構造がある。

簡単な計算をしてみてほしい。年間採用数10名・1名あたり採用コスト60万円の企業で、離職率が30%の場合、毎年3名が抜けてその補充に180万円かかる。離職率を15%に下げると、補充採用は年1〜2名になり、採用コストは60〜120万円に圧縮できる。差額の60〜120万円は、育成投資や処遇改善に回せる。

中国・四国の中小企業で離職率のデータを取っていない会社が多い。「感覚的に最近よく辞める気がする」ではなく、入社3ヶ月・1年・3年時点の残存率を数字で把握することから始めてほしい。

定着率を上げる施策の中で、効果の割にコストが低いのはオンボーディングの整備だ。最初の1〜3ヶ月の業務設計と関係性構築を丁寧にすることで、「こんな会社だと思わなかった」という認知のギャップを減らすことができる。


6. 採用ブランディングは「見せ方」より「実態」が先

「採用ブランディング」という言葉が流行しているが、中国・四国の企業でこれを手掛けると、しばしば本末転倒になる。実態が伴わないのにコンテンツだけ磨いてしまうケースだ。

採用候補者は思っている以上にリアルを見ている。口コミサイトは、都市部だけでなく中国・四国の企業も掲載されている。SNSでの社員の発言も見られる。「採用サイトはきれいだけど、実際は……」というギャップが広がると、むしろ逆効果になる。

採用ブランディングの前提は、「社員が今の会社を人に薦めたいと思えるか」だ。簡単な指標として、社員に「この会社、知り合いに薦めますか?」と聞いてみてほしい。YESが少ないなら、採用より先にやることがある。

採用を強化するにあたり、経営者に「採用コストの前に、今の社員の処遇や職場環境を見直しましょう」と伝えるのは、人事担当者にとってハードルが高い。しかし、それを言える人事でいることが、採用数の増加より長期的に効果を生む。


7. 人口が減っても「採りたい人」に選ばれる企業になるために

人口減少は止まらない。中国・四国の多くの市町村では、10年後の生産年齢人口がさらに15〜25%減ると予測されている。採用の競争は激化し続ける。

その中で「採りたい人に選ばれる企業」になるために、人事として何を経営に提案できるか。採用手法の改善は必要だが、それ以上に重要なのは「採用戦略が経営戦略と連動しているか」という問いだ。

たとえば、5年後に事業をどの方向に伸ばすのか。そのためにどんなスキルや特性を持つ人材が必要か。現在の採用はその戦略と整合しているか。これらを経営者と一緒に考えられる人事が、採用難の時代に差を生む。

「採用が難しい」は、人事だけの問題ではない。経営の問題として、社長・事業責任者と一緒に取り組む体制を作ることが、中長期の採用競争力につながる。


まとめ

中国・四国の採用難は、手法の問題というより構造の問題だ。人口が減る中で「選ばれる企業」になるには、採用の前段——職場の実態、社員の満足度、地域への関与、採用と経営の連動——を整えることが先に来る。

求人票を書き直すより、「うちの社員は会社を友人に薦めたいと思っているか?」を問う。それが中国・四国の採用難を乗り越える起点になる。


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