
広島の中小企業が「採用マーケティング」を始める方法——求人を出す前にやるべきことがある
目次
広島の中小企業が「採用マーケティング」を始める方法——求人を出す前にやるべきことがある
「求人サイトに掲載しても、応募がほとんど来ないんです。年間200万円以上使っているのに」。広島市内のある機械部品メーカーの採用担当者から、こう相談されたことがあります。
この悩みは、広島の多くの中小企業に共通するものです。求人サイトに掲載し、合同説明会に出展し、ハローワークに求人票を出す。しかし、応募は来ない。来ても、自社が求める人材とは異なる。
私は、この問題の根本にあるのは「採用の手法」ではなく「採用の考え方」だと感じています。多くの企業は、「求人を出して応募を待つ」という受動的な採用をしています。しかし、人材獲得競争が激化する中で、受動的な採用では限界があります。
必要なのは、「採用マーケティング」の発想です。マーケティングが「顧客に自社の商品を選んでもらう」ための活動であるように、採用マーケティングは「候補者に自社を選んでもらう」ための活動です。
この記事では、広島の中小企業が採用マーケティングを始めるための考え方と実践方法について整理していきます。
採用マーケティングとは何か
基本的な考え方
採用マーケティングとは、マーケティングの手法を採用活動に応用する考え方です。
従来の採用は、「求人を出す→応募を待つ→選考する→内定を出す」という流れでした。企業が「選ぶ側」、候補者が「選ばれる側」という前提です。
採用マーケティングは、この前提を逆転させます。候補者が「選ぶ側」であり、企業が「選ばれる側」。だから、候補者に「この企業で働きたい」と思ってもらうための活動が必要になります。
マーケティングファネルの応用
マーケティングでは、顧客が購買に至るまでの段階を「ファネル(漏斗)」として捉えます。採用マーケティングでも同じ発想が使えます。
認知。候補者が自社の存在を知る段階。まだ応募の意思はなく、「こんな会社があるんだ」という程度。
興味。候補者が自社に興味を持つ段階。「この会社、面白そうだ」「もう少し知りたい」。
検討。候補者が自社への応募を真剣に検討する段階。「この会社に応募してみようか」。
応募。候補者が実際に応募する段階。
選考・入社。選考プロセスを経て、入社に至る段階。
従来の採用は、「応募」以降のプロセスだけに注力しています。しかし、採用マーケティングは「認知」から「興味」「検討」の段階にも投資する。つまり、まだ応募していない潜在的な候補者に対して、自社の存在を知ってもらい、興味を持ってもらう活動を行うのです。
広島の中小企業が採用マーケティングに取り組むべき理由
広島の労働市場の特性
広島県は、中国地方最大の経済圏です。自動車関連産業を中心に製造業が集積し、IT・サービス業も成長しています。しかし、その分、企業間の人材獲得競争も激しい。
大手企業や有名企業が広島に拠点を置いている中で、中小企業が知名度だけで勝負するのは難しい。だからこそ、採用マーケティングを通じて「自社ならではの魅力」を候補者に伝えることが重要になります。
潜在層へのアプローチの重要性
求人サイトに登録している「転職活動中の人」は、労働市場全体のごく一部です。大多数の人は、「今すぐ転職する気はないが、良い話があれば聞いてみたい」という潜在層です。
採用マーケティングは、この潜在層にアプローチする手段です。「今すぐ応募してください」ではなく、「こんな会社があることを知ってください」「興味があればフォローしてください」——こうしたアプローチが、将来の応募者を育てます。
採用マーケティングの具体的な施策
施策1:自社の採用ページを充実させる
採用マーケティングの基盤は、自社の採用ページです。候補者が自社に興味を持ったとき、最初に確認するのが採用ページです。
採用ページに掲載すべき情報は、会社の事業内容と強み、代表メッセージ(経営者の想いや会社のビジョン)、社員インタビュー(実際に働いている人の声)、職場環境の写真・動画、募集要項の詳細、選考プロセスの説明、福利厚生・待遇の情報です。
広島ならではの情報も重要です。広島の生活環境、交通アクセス、子育て環境——UIターン候補者にとって、「広島で働くとどんな生活になるか」は大きな関心事です。
施策2:SNSの活用
SNSは、低コストで潜在層にリーチできる強力なツールです。
情報発信のテーマは、社内のイベントや日常の様子、社員の成長ストーリー、仕事のやりがいや面白さ、会社の取り組み(社会貢献、地域活動)、業界や専門分野の知見です。
発信のポイントは、「企業の公式発表」のような堅い内容ではなく、社員の人柄や職場の雰囲気が伝わる、親しみやすい内容にすること。候補者が知りたいのは、「この会社で働いたら、どんな毎日になるか」です。
広島のあるWeb制作会社では、社員が交代でSNSを更新しています。ランチの写真、チームのミーティング風景、新しいプロジェクトの裏話——飾らない日常を発信することで、フォロワーが着実に増え、SNS経由での応募が増加しました。
施策3:コンテンツマーケティング
自社のブログやnote、メディアを通じて、専門的な情報を発信する方法です。
例えば、製造業であれば、製品のこだわりや技術力に関する記事。IT企業であれば、技術ブログ。サービス業であれば、顧客への価値提供のストーリー。
こうしたコンテンツは、求職者だけでなく、業界関係者や学生にもリーチします。「この会社は面白いことをやっている」という認知が広がることで、将来の採用につながります。
施策4:社員によるリファラル(紹介)の促進
採用マーケティングの中で、最も費用対効果が高いのがリファラル採用です。自社の社員が、知人や友人に自社を紹介する。
リファラル採用が機能するためには、社員が「自社を誰かに紹介したい」と思っていることが前提です。つまり、社員のエンゲージメントが高いことが条件です。
リファラル採用の仕組みづくりとしては、紹介者へのインセンティブの設定、紹介のハードルを下げる仕組み(紹介カードの配布、紹介用のWebページの作成)、紹介が成功した事例の社内共有が有効です。
施策5:地域イベントへの参加
広島では、地域の就職イベント、ビジネス交流会、大学との連携イベントなどが定期的に開催されています。こうしたイベントに積極的に参加することで、自社の存在を地域の潜在的な候補者に知ってもらうことができます。
ポイントは、イベントに参加するだけでなく、「イベントで出会った人との関係を継続する」ことです。名刺を交換した人にフォローのメールを送る、SNSでつながる——こうした小さな行動の積み重ねが、将来の採用につながります。
採用マーケティングの実行体制
誰がやるか
中小企業では、採用マーケティングの専任担当者を置くことは難しい。しかし、人事担当者が一人で抱え込む必要もありません。
チームで取り組む。SNSの更新は各部門の社員が交代で担当する。採用ページのコンテンツは、人事と各部門の協力で作成する。リファラル採用は全社員の協力で推進する。
外部の支援を活用する。採用ページの制作やSNSの運用は、広島の地域のマーケティング会社やフリーランスの力を借りることも有効です。
予算の考え方
採用マーケティングは、必ずしも大きな予算を必要としません。SNSの運用は無料、採用ページの更新は自社で行える範囲から始められます。
重要なのは、「求人サイトの掲載費用」と「採用マーケティングへの投資」のバランスを見直すことです。求人サイトに年間200万円を使っているなら、その一部を採用マーケティングに振り向けることを検討する。
採用マーケティングの効果測定
測定すべき指標
認知段階。採用ページのアクセス数、SNSのフォロワー数・インプレッション数。
興味段階。採用ページの滞在時間、社員インタビューの閲覧数。
応募段階。応募数、応募経路別の内訳。
選考・入社段階。選考通過率、内定承諾率、入社後の定着率。
これらの指標を定期的に追跡することで、「どの施策が効果的か」「どこにボトルネックがあるか」が見えてきます。
広島の中小企業ならではの採用マーケティング戦略
広島の産業特性を活かす
広島は自動車関連産業を中心に、精密機器、食品、ITなど多様な産業が集積しています。この産業の多様性は、採用マーケティングにおいても活かせます。
「広島のものづくりを支える技術力」「瀬戸内の環境を活かしたワークライフバランス」「広島発のイノベーション」——地域のストーリーと自社の事業を結びつけることで、候補者の心に響くメッセージを作ることができます。
UIターン人材へのアプローチ
広島出身で現在は都市部に住んでいる人材に対して、「広島に戻る」という選択肢を提示するアプローチが有効です。
帰省のタイミングに合わせた説明会の開催。広島出身者のコミュニティとの連携。「広島で働く」魅力を発信するコンテンツの作成——UIターン人材の獲得は、長期的な採用マーケティングのテーマとして取り組む価値があります。
広島のあるメーカーでは、「広島で働くリアル」というシリーズ記事をnoteで連載し、UIターンで入社した社員の生活を紹介しています。通勤事情、住環境、子育て環境、休日の過ごし方——「広島で暮らすイメージ」が具体的になることで、UIターンへの心理的ハードルが下がっています。
採用マーケティングは「急がば回れ」
採用マーケティングの効果は、すぐには出ません。SNSのフォロワーを増やし、コンテンツを蓄積し、認知を広げる——これには時間がかかります。
しかし、一度基盤ができれば、持続的に候補者を引きつける力になります。求人サイトに掲載するたびに費用がかかるのに対し、自社の採用ページやSNSのコンテンツは、蓄積されるほど価値が増していきます。
広島の中小企業にとって、採用マーケティングは「急がば回れ」の取り組みです。目の前の採用を求人サイトで埋めることも必要ですが、同時に、中長期的な採用力を築くための投資として、採用マーケティングに着手する。
「この会社で働きたい」と思ってもらえる企業になること。それが、採用の課題を根本から解決する道です。
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