
中国・四国の企業が人事データ活用を始めるための第一歩——中国・四国で人事に取り組む方へ
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中国・四国の企業が人事データ活用を始めるための第一歩——中国・四国で人事に取り組む方へ
「人事データ活用って、何から始めればいいんですか」。この質問を、中国・四国の中小企業の人事担当者から数え切れないほど受けてきました。
「ピープルアナリティクス」「HR テック」「データドリブン人事」——こうした言葉がメディアで飛び交い、大手企業の先進事例が紹介されるたびに、「うちもやらなければ」という焦りを感じる人事担当者が増えています。しかし、いざ始めようとすると、「そもそもデータが整理されていない」「高額なシステムを導入する予算がない」「分析の専門知識がない」——ハードルの高さに尻込みしてしまう。
結論から言います。人事データ活用は、エクセルと既存のデータだけで始められます。高額なシステムも、統計学の専門知識も、最初は必要ありません。
私はこれまで500社以上の企業の人事課題に向き合ってきましたが、中小企業の人事データ活用で最も重要なのは「まず手を動かすこと」です。完璧なデータ基盤を整えてから始めようとすると、永遠にスタートできません。この記事では、中国・四国の中小企業が、今すぐ始められる人事データ活用の方法を整理します。
なぜ人事データを活用するのか
人事データ活用の目的は、「人事の意思決定の質を上げること」です。
経験と勘に基づく人事判断が悪いわけではありません。長年の経験を持つ人事担当者の「この人はこの部署に合いそうだ」という直感は、多くの場合正しい。しかし、データを使うことで、その直感を「裏付ける」ことができます。
「離職率が高い」と感覚的に思っていることを、「入社3年以内の離職率が25%で、特にA部署に集中している」とデータで示せれば、対策の優先順位が明確になる。経営者に「A部署のマネジメント研修に50万円の投資をしたい」と提案するとき、「なんとなく問題がある気がする」では通りませんが、「データでこう出ています」なら、経営者は判断しやすくなる。
つまり、人事データ活用は「経営との対話の質を上げる」ための手段です。これは「経営数字から発想する人事」の実践そのものです。
まず押さえるべき5つのデータ
中小企業がまず収集・整理すべき人事データは5つです。すべて、多くの企業が何らかの形で持っているはずのデータです。
1. 勤怠データ
出退勤時刻、残業時間、有給休暇取得日数、欠勤日数——勤怠管理システムを使っている企業はそこから、紙のタイムカードの企業はエクセルに転記して整理します。月別・部署別・個人別に集計できる状態にすることが第一歩です。
2. 離職データ
過去3〜5年間の退職者の情報。退職日、在籍期間、部署、年齢、退職理由(退職面談の記録がある場合)——これらを一覧にします。時系列で見ることで、「離職が増えている時期」「離職が集中している部署」が見えてきます。
3. 採用データ
応募者数、選考通過率、採用チャネル別の実績、採用コスト——これらを記録・整理します。「どのチャネルから、どのくらいのコストで、何名採用できたか」がわかれば、採用予算の配分を最適化できます。
4. 人件費データ
給与、賞与、社会保険料、福利厚生費——人件費の内訳を個人別・部署別に把握します。「売上高人件費率」「一人あたり人件費」「一人あたり売上高」——これらの指標を月次で追いかけることで、人材投資の効率を見ることができます。
5. 評価データ
人事評価の結果(定量評価・定性評価の両方)を蓄積します。評価結果とその後の昇格・昇給との相関、評価結果と離職との相関——こうした分析は、評価制度の妥当性を検証するための基礎データになります。
エクセルでできる3つの分析
「データを集めたら、次は何をするのか」。ここで紹介する3つの分析は、すべてエクセルで実行可能です。
分析1:離職率の「深掘り」
全社の離職率だけを見ていても、課題は特定できません。離職率を「部署別」「入社年次別」「年齢層別」「退職理由別」に分解して見ることで、「どこに」「どんな」問題があるかが浮かび上がります。
エクセルのピボットテーブル機能を使えば、退職者データを多角的に集計できます。「製造2課の入社3年以内の離職率が40%で、退職理由の80%が『上司との関係』」——このレベルの情報が得られれば、対策は具体的になります。
広島のある機械メーカーでは、人事担当者がエクセルで離職データを分析した結果、「特定の課長の下で離職率が突出して高い」ことを発見。課長向けのコミュニケーション研修を実施した結果、翌年の離職率が大幅に改善しました。分析にかかった時間は約3時間、研修コストは15万円。この投資で年間の離職コスト約300万円を削減できた計算です。
分析2:残業時間の「見える化」と異常検知
月別・部署別・個人別の残業時間をグラフ化し、「いつ」「誰が」「どのくらい」残業しているかを可視化します。特定の時期に残業が集中していれば、その時期の業務配分を見直す。特定の個人に残業が偏っていれば、業務の再配分やスキル共有を検討する。
月平均残業が45時間を超える社員を自動検出するルールをエクセルの条件付き書式で設定するだけでも、「長時間労働の早期発見」が可能になります。
分析3:採用チャネル別のROI
各採用チャネル(求人サイト、エージェント、リファラル、ハローワーク等)について、「投資額」「採用人数」「1名あたりの採用コスト」「入社後の定着率」を比較します。
この分析により、「コストが高い割に定着率が低い」チャネルや、「低コストで定着率が高い」チャネルが見えてきます。次年度の採用予算配分を、データに基づいて最適化できます。
岡山のある建設会社では、この分析を行った結果、「エージェント経由の採用は1名あたり130万円だが、3年以内離職率が40%。リファラル採用は1名あたり25万円で、3年以内離職率が10%」という実態が判明。リファラル採用を強化する方針に切り替え、年間の採用コストを約200万円削減しました。
データ活用を阻む3つの壁とその乗り越え方
壁1:「データが散在している」
勤怠データは勤怠システムに、給与データは給与計算ソフトに、評価データは紙のファイルに——データがバラバラに存在していて、統合して分析できない。
乗り越え方:最初から完璧なデータベースを目指さない。まずは、分析に必要なデータだけをエクセルにまとめる。「離職データ」から始めるのであれば、退職者一覧にエクセルで必要な項目を追加するだけ。30分もあれば始められます。
壁2:「分析のスキルがない」
統計学の知識がない、エクセルの高度な機能が使えない——こうした不安を持つ人事担当者は多い。
乗り越え方:最初に必要なスキルは、「エクセルのピボットテーブル」と「グラフ作成」だけです。この2つができれば、前述の3つの分析はすべて実行可能。YouTubeで「エクセル ピボットテーブル 使い方」と検索すれば、30分で習得できます。
壁3:「分析しても、何をすればいいかわからない」
データを分析した結果、「離職率が高い部署がある」とわかっても、「だからどうすればいいのか」がわからない。
乗り越え方:データ分析の結果は「問い」を立てるために使います。「離職率が高い部署がある」→「なぜ高いのか」→「退職理由を調べよう」→「上司との関係が多い」→「上司のマネジメントに課題があるのではないか」→「面談で詳しく確認しよう」——データは「答え」を直接教えてくれるわけではありませんが、「どこを掘り下げれば良いか」を教えてくれます。
データ活用の「成熟度モデル」
人事データ活用は、段階的に進めることが現実的です。
レベル1:記録する——データを記録・蓄積する段階。勤怠データ、離職データ、採用データを「整理された状態で保存する」ことが目標。多くの中小企業は、まずここから始めればよい。
レベル2:見える化する——蓄積したデータをグラフや表にして「見える化」する段階。「うちの離職率は○%で、業界平均より高い」「残業が特定の部署に集中している」——現状を可視化できる状態。
レベル3:分析する——データを掘り下げて「なぜ」を分析する段階。離職率の高い部署の要因分析、採用チャネルのROI比較、研修効果の測定——仮説を立てて検証できる状態。
レベル4:予測する——データに基づいて将来を予測する段階。「この傾向が続けば、来期はA部署で3名の退職が見込まれる」「現在の採用ペースでは、来期の増員計画に対して2名不足する」——先回りした対策が打てる状態。
中小企業がまず目指すべきはレベル2です。レベル2に到達すれば、経営者との対話の質が格段に上がります。レベル3以降は、レベル2を運用しながら徐々に進めていけばよい。
事例:香川の製造業が人事データ活用で成果を出した話
香川県高松市にある従業員65名の金属加工メーカーの事例を紹介します。
人事担当者のUさんは、「データで人事を語りたい」と思いつつも、何から始めればいいかわからない状態でした。社内に人事データベースはなく、給与計算ソフトと紙のタイムカード、エクセルの社員名簿がバラバラに存在しているだけでした。
Uさんが最初に取り組んだのは、「離職データの一元化」でした。過去5年間の退職者32名の情報(退職日、在籍期間、部署、年齢、退職理由)をエクセルに入力。作業時間は約4時間でした。
次に、このデータをピボットテーブルで分析。すると、以下の事実が浮かび上がりました。「入社3年以内の離職率が35%と突出して高い」「製造部のC課の離職率が他の課の2倍以上」「退職理由の最多は『業務内容のミスマッチ』」。
この分析結果を経営者に報告したところ、「今まで感覚的には気づいていたが、数字で見ると問題の深刻さが実感できる」という反応でした。
分析結果を踏まえて、2つの施策を実施しました。1つ目は、C課の課長との面談を通じたマネジメント課題の特定と改善。2つ目は、採用時の業務説明の充実(工場見学の実施、先輩社員との面談機会の設定)。
1年後、入社3年以内の離職率が35%から18%に改善。C課の離職率も他の課と同水準に低下。離職コストの削減効果は年間約250万円と試算されています。
Uさんは言います。「エクセルと4時間の作業から始まったデータ活用が、年間250万円の成果を生んだ。難しいことは何もしていない。データを整理して、見て、考えただけです」。
人事データ活用を「経営の言語」にする
人事データ活用の最終的なゴールは、「人事が経営の言語で語れるようになること」です。
「離職率が高いので対策が必要です」ではなく、「入社3年以内の離職率35%による年間損失額は約500万円。この損失を年間100万円の投資で半減できます」——データに基づいて、投資判断の材料を経営者に提示する。
これは、大企業だけの話ではありません。中国・四国の中小企業でも、エクセルと既存のデータから始められます。まずは「記録する」「見える化する」ことから始めて、徐々にレベルを上げていく。その一歩が、経営と人事の距離を縮め、組織の課題解決を加速させます。
データは、人事の仕事を「感覚の世界」から「判断可能な世界」に引き上げるツールです。そのツールを使いこなすことで、中国・四国の中小企業の人事がもっと強くなる。私はそう確信しています。
もっと深く学びたい方へ
体系的に人事の実践知を身につけたいなら、人事のプロ実践講座へ。
日々の悩みを仲間と共有したい方は、人事図書館へ。
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