中国・四国の企業が「採用要件」を経営戦略から逆算する方法——中国・四国で人事に取り組む方へ
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中国・四国の企業が「採用要件」を経営戦略から逆算する方法——中国・四国で人事に取り組む方へ

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中国・四国の企業が「採用要件」を経営戦略から逆算する方法——中国・四国で人事に取り組む方へ

「採用しても、現場からいつも『違う人が欲しかった』と言われるんです。でも、どんな人が欲しいかを聞いても、『いい人』としか返ってこない」。島根のある建材メーカーの人事担当者から、こんな悩みを聞きました。

その企業は従業員100名。年間5〜6名の中途採用を行っていますが、入社後のミスマッチが続いていました。スキルは十分なのに社風に合わない、経験は豊富なのに期待した役割を果たせない——採用の判断基準が曖昧なまま「なんとなく良さそうな人」を採用した結果、双方にとって不幸な結末を迎えるケースが少なくなかった。

この問題の根本にあるのは、「採用要件が経営戦略と紐づいていない」ことです。

採用要件とは、「どんなスキル、経験、行動特性、価値観を持った人材を採用するか」を定義したものです。多くの企業では、この採用要件が「現場の感覚」や「直近の欠員補充」から決まっており、経営戦略との接続が弱い。

私はこれまで500社以上の企業の人事課題に向き合ってきましたが、採用は「欠員を埋める」作業ではなく「経営戦略を実現するための人材ポートフォリオを構築する」活動だと考えています。この記事では、中国・四国の企業が採用要件を経営戦略から逆算する方法を、経営数字の視点から考えていきます。


なぜ「経営戦略から逆算」が必要なのか

「欠員補充」型採用の限界

多くの中小企業の採用は、「Aさんが辞めたから、Aさんの代わりを採用する」という欠員補充型です。しかし、この方法にはいくつかの限界があります。

過去の延長でしか考えられない:「Aさんと同じようなスキルの人」を探す。しかし、事業環境が変化している場合、「Aさんと同じスキル」が今後も必要とは限らない。

部門の「ほしい」と経営の「必要」のズレ:現場の管理職は、自部門に必要な人材を要望する。しかし、会社全体として見た時に、その部門に人を増やすことが最適かどうかは別問題。

戦略的な人材投資ができない:「今はいないけど、3年後に必要になる人材」を先行して採用する発想が生まれない。

経営戦略から逆算するメリット

経営戦略を起点に採用要件を定義することで、以下のメリットが生まれます。

中長期的な視点で人材を確保できる:3年後、5年後の事業計画に必要な人材を、今から計画的に採用できる。

採用の優先順位が明確になる:「どのポジションの採用が、経営戦略上最も重要か」が判断できる。限られた採用予算を、最も効果の高い採用に集中投下できる。

採用のミスマッチが減少する:「なぜこのポジションにこのスキルが必要なのか」が経営戦略と紐づいて説明できるため、採用の判断基準が明確になる。


経営戦略から採用要件を逆算するプロセス

ステップ1:経営戦略の確認

まず、自社の中期経営計画(3〜5年)を確認します。中期経営計画がない場合は、経営者に以下の質問を投げかけ、方向性を言語化します。

  • 3年後、売上・利益はどの水準を目指すか
  • 新規事業や新たな市場開拓の計画はあるか
  • 既存事業で強化すべき領域はどこか
  • 縮小・撤退を検討している事業はあるか
  • DXやデジタル化の推進計画はあるか
  • 組織体制の変更(部門の新設・統合)の計画はあるか

ステップ2:必要な組織能力の特定

経営戦略を実現するために、「組織としてどんな能力が必要か」を特定します。

たとえば、「3年後に海外売上比率を10%から20%に引き上げる」という戦略であれば、必要な組織能力は「海外営業力」「語学力」「現地の法規制への対応力」「国際物流の知識」など。

「既存の製造業から、IoTを活用したサービス事業に進出する」という戦略であれば、「IoT技術」「ソフトウェア開発力」「サービスデザイン」「データ分析力」などが必要になります。

ステップ3:現在の人材ポートフォリオの棚卸し

必要な組織能力に対して、現在の社員が持っているスキルを棚卸しします。スキルマップがあれば活用し、なければ管理職へのヒアリングで把握する。

「海外営業力がある社員は何名いるか」「IoT技術を持つ社員はいるか」——現在の人材ポートフォリオと、必要な組織能力のギャップを明確にします。

ステップ4:ギャップの充足方法を決定する

ギャップを埋める方法は、大きく3つあります。

育成:既存の社員を育成して、必要なスキルを習得させる。時間はかかるが、コストは比較的低い。 採用:必要なスキルを持った人材を外部から採用する。即戦力が得られるが、採用コストがかかる。 外部活用:業務委託、フリーランス、顧問などの外部人材を活用する。柔軟性は高いが、組織にノウハウが蓄積されにくい。

どのギャップを「育成」で埋め、どのギャップを「採用」で埋めるかを判断します。判断基準は「緊急度」と「専門度」です。緊急度が高く、専門度が高いギャップは「採用」で埋める。緊急度が低く、専門度が低いギャップは「育成」で埋める。

ステップ5:採用要件の定義

「採用で埋める」と決定したギャップについて、具体的な採用要件を定義します。

職種・ポジション:何の役割か 必須スキル(MUST):このスキルがなければ務まらない 歓迎スキル(WANT):あれば望ましいが、入社後の習得も可能 経験:どの程度の経験年数、どんな業界・職種の経験が必要か 行動特性:自社で成果を出すために必要な行動特性(コンピテンシー) 価値観・カルチャーフィット:自社の文化に合う価値観

ステップ6:採用の優先順位の決定

複数のポジションの採用が必要な場合、経営戦略上のインパクトに基づいて優先順位を決定します。「このポジションが埋まらないと、戦略の実行が遅れる」——インパクトが大きいポジションから優先して採用活動を行います。


中国・四国の企業での実践例

事例1:新規事業の立ち上げに向けた採用

広島のある機械メーカー(従業員80名)は、3年後にIoTを活用した設備保守サービス事業を立ち上げる計画を持っていました。

経営戦略から逆算して、以下の採用要件を定義しました。

ポジション:IoTサービス開発リーダー 必須スキル:組み込みシステムの開発経験3年以上、プロジェクトマネジメント経験 歓迎スキル:製造業の知識、クラウドインフラの経験 行動特性:自律的に動ける、不確実な状況でも前に進める 採用時期:新規事業の本格立ち上げの1年前(準備期間として)

この要件に基づいて採用活動を行い、東京のIT企業からUターンで入社したエンジニアを採用。入社後1年間は既存の設備知識を習得しながら、IoTサービスの設計を進め、計画通りに新規事業の立ち上げに成功しました。

事例2:海外展開に向けた採用

岡山のある農業資材メーカー(従業員60名)は、東南アジア市場への進出を計画していました。

経営戦略から逆算した採用要件は以下の通りです。

ポジション:海外営業担当 必須スキル:英語でのビジネスコミュニケーション(TOEIC 700点以上目安)、法人営業経験3年以上 歓迎スキル:東南アジアでの勤務経験、農業関連の知識 行動特性:異文化に対する柔軟性、未知の環境でも積極的に行動できる カルチャーフィット:地域に根ざした企業で長期的に働く意欲

中国・四国で海外営業経験者を採用するのは容易ではありませんでしたが、要件を明確に定義したことで、人材紹介会社への依頼も的確になり、3ヶ月で要件に合致した候補者を採用できました。


採用要件を現場と共有する

「ジョブディスクリプション」として文書化する

定義した採用要件を、「ジョブディスクリプション(職務記述書)」として文書化します。

ジョブディスクリプションの構成:

  • ポジション名
  • 所属部門
  • レポートライン(誰に報告するか)
  • 職務概要
  • 主な責任と業務内容
  • 必須スキル・経験
  • 歓迎スキル・経験
  • 求める行動特性
  • キャリアパス(入社後のキャリアの見通し)

面接官との共有

採用要件を面接官(管理職、経営者)と共有し、「何を見極めるか」の認識を揃える。面接官ごとに評価基準がばらつく問題を防ぐために、面接評価シートを採用要件に基づいて作成する。

候補者への開示

採用要件の一部は、求人票や採用ページに反映させる。「どんな人材を求めているか」が明確に伝わることで、自社に合う候補者からの応募が増え、ミスマッチが減少します。


採用要件の定義でよくある失敗

失敗1:現場の「理想像」をそのまま採用要件にする

現場に「どんな人が欲しいですか」と聞くと、「何でもできる人」「即戦力で、コミュニケーション力が高くて、リーダーシップもある人」——現実には存在しないスーパーマンを求める回答が返ってくることがあります。

対策:「必須(MUST)」と「歓迎(WANT)」を明確に分ける。「このスキルがなければ業務が成り立たない」という必須要件は厳守し、「あればなお良い」という歓迎要件は柔軟に扱う。必須要件は3〜4項目に絞ることで、現実的な採用要件になります。

失敗2:スキルばかりでカルチャーフィットを見ない

スキルと経験が十分でも、自社の文化に合わない人材を採用すると、本人も周囲も苦しむ。特に中小企業では、組織の人数が少ない分、1人のカルチャーフィットの問題が組織全体に影響します。

対策:採用要件に「行動特性」「価値観」の項目を含める。面接では、「過去にどんな場面でどう行動したか」を具体的に聞くことで、スキルだけでは見えない行動特性を把握する。

失敗3:採用要件を一度作ったら更新しない

経営戦略は変化します。市場環境の変化、競合の動き、技術革新——こうした変化に応じて、採用要件も見直す必要があります。

対策:年に1回、中期経営計画のレビューに合わせて、「必要な組織能力」と「人材ポートフォリオのギャップ」を再評価し、採用要件を更新する。


まとめ

採用要件を経営戦略から逆算することは、「いい人を採る」から「必要な人を採る」への転換です。

「いい人」は漠然としていて、面接官によって解釈が異なる。しかし、「経営戦略上、このスキルとこの行動特性を持った人材が必要だ」と定義すれば、採用の判断基準が明確になり、ミスマッチが減少します。

中国・四国の企業にとって、1名の採用のインパクトは大きい。社員100名の企業で1名の採用は、組織の1%を変える決断です。その1%の判断を、経営戦略に基づいて行うのか、場当たり的に行うのか——この差が、3年後、5年後の組織の力に大きく影響します。

中国・四国の企業が、採用を「経営戦略の実行手段」として位置づけ、必要な人材を計画的に確保していく。その取り組みが、企業の持続的な成長を支えることを願っています。

採用は、今日の欠員を埋めるためだけの活動ではない。未来の組織を作るための投資である。その視点を持つことが、採用の質を根本から変えるはずです。

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