中国・四国の産業構造から逆算する人員計画——中国・四国で人事に取り組む方へ
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中国・四国の産業構造から逆算する人員計画——中国・四国で人事に取り組む方へ

#採用#評価#研修#組織開発#経営参画

中国・四国の産業構造から逆算する人員計画——中国・四国で人事に取り組む方へ

「毎年なんとなく採用計画を立てているが、事業計画との連動がうまくできていない」

岡山県内の食品製造会社で人事を担当しているCさんは、経営会議での議論を振り返りながらそう話しました。社長からは「来年度は新しい製品ラインを立ち上げるから、20名追加で採用してほしい」と言われる。でも、どんなスキルを持った人が必要か、既存の人員をどう再配置するか、離職でどのくらい欠員が出るか——こういった詳細は煮詰まっていない。結果として採用してみたら「思ったより即戦力じゃなかった」「配属先で余剰が出た」という話になる。これを毎年繰り返してきたと言います。

中国・四国の企業で人事に取り組む方が直面する課題の一つが、人員計画の精度です。高齢化と人口減少が進む地域特性の中で、場当たり的な採用計画では組織の持続性が危うい。だからこそ、事業から逆算した人員計画の設計力が求められています。


中国・四国の産業特性と人員計画の関係

人員計画は、その地域の産業構造と切り離せません。

広島・岡山のマツダサプライチェーン周辺では、車両の生産調整や新モデル投入のタイミングで人員ニーズが大きく変動します。自動車関連の製造業では、繁忙期に合わせた期間雇用の調整と、技能継承を担う正社員の安定採用のバランスが常に課題です。

愛媛・高知の水産・食品加工業では、漁獲量や農産物の収穫シーズンに合わせた季節変動があり、通年雇用の安定確保と繁忙期の人員充足をどう両立するかが問われます。高知のカツオ漁の加工場では、6〜9月の最繁忙期に向けて毎年数十名規模の短期スタッフを確保する一方、通年の正社員をどう育て・定着させるかが長年の課題だと聞きます。

徳島・香川では、観光業・サービス業が地域経済の柱のひとつですが、コロナ禍で大きな打撃を受けた後、人員を一気に絞り込んだことで「需要回復後に採用が追いつかない」という問題が複数の企業で起きました。

こうした地域特性を踏まえた上で、自社の人員計画を設計することが、中国・四国の人事担当者に求められていることです。


人員計画の設計プロセス

人員計画には、いくつかの基本的なステップがあります。これを体系立てて整理している中小企業は少ないので、整備することで差別化できます。

ステップ1:現在の人員構成を「見える化」する

まず現状把握から始めます。年齢分布・勤続年数・職種別人数・スキルマップ——これを一覧にするだけで、「5年後に定年退職が集中する部門」「若手が極端に少ない職種」といった課題が浮き上がります。岡山の造船関連会社では、この可視化をしたことで「熟練技術者が5年以内に全員60歳超になる」という事実が明確になり、早期の技能継承プロジェクトが動き始めました。

ステップ2:事業計画から人員需要を逆算する

「3年後に売上を30%増やす」という目標がある場合、何名・どんなスキルの人員が必要かを計算します。売上増に必要な生産能力の増強、新規事業立ち上げに必要なポジション、既存業務の効率化で削減できる工数——これらを組み合わせることで、「純増で何名必要か」という数字が出てきます。

ステップ3:自然減・離職リスクを加算する

定年退職・想定離職数を加えると、実際の採用必要数が見えてきます。たとえば、3年後に「10名不足」という予測に対し、定年退職3名+年間離職率5%×総人員50名=2.5名×3年=7.5名が自然減だとすると、採用必要数は17〜18名になります。こうした計算を経営者と共有することで、採用計画の根拠が明確になります。

ステップ4:採用・育成・定着の施策に落とし込む

必要人員数と人員プロフィール(スキル・年齢層・雇用形態)が決まったら、どう確保するかの施策に落とします。外部採用だけでなく、内部育成(社内異動・スキルアップ研修)、シニア活躍(定年後の継続雇用)、副業・パートタイムの活用なども選択肢に入れることで、採用コストの効率化にもつながります。


人員計画が機能しない3つの理由

理由1:事業計画との連動がない

人員計画が「今年の採用予定数」の確認にとどまっていて、3〜5年の中期的な事業計画と結びついていないケース。これでは、事業の変化に人員が対応できず、常に「人が足りない」か「余っている」という状況を繰り返すことになります。

理由2:データが使われていない

離職率・平均勤続年数・採用コスト・育成コストといった数字を人事担当者が把握していないことがあります。数字なしで話し合っても、感覚論の議論になりがちです。基本的な人事データの集計・管理が、人員計画の質を左右します。

理由3:現場と人事が連携していない

「来年何名必要か」を現場マネジャーに聞かずに人事が決めてしまうケースも多い。現場には「来年度に退職しそうな人がいる」「新しい機械が入るので操作できる人が必要」といった情報がある。定期的な現場ヒアリングを人員計画のプロセスに組み込むことが重要です。


中小企業で使いやすい人員計画の簡易フレーム

複雑なシステムや詳細な計算ツールを使わなくても、以下の3×3の簡易フレームで人員計画の基礎は整理できます。

| 視点 | 現状 | 1〜2年後 | 3〜5年後 | |------|------|---------|---------| | 人員数 | ○名 | ○名必要 | ○名必要 | | スキル構成 | 技術X名/営業Y名 | 変化の見込み | 変化の見込み | | リスク | 定年○名・高離職部門 | 採用難の懸念 | 技術継承の課題 |

このシンプルな表を経営会議に持ち込むだけで、「人材のことを数字で話せる人事担当者」という評価が生まれ、経営者との対話が変わります。


人員計画を「採用以外の手段」とセットで考える

人員計画を立てると、「採用が必要」という結論になることが多い。しかし、採用以外にも人員需要に応える手段があります。

内部育成・異動:既存社員のスキルを広げ、新しいポジションに異動させることで、採用コストをかけずに人員需要に対応できる場合があります。「採用が必要かどうか」の前に、「社内に適材がいないか」を確認する習慣が重要です。

シニア・定年後の継続雇用:60歳以上の継続雇用は、採用コストゼロで経験豊富な人材を確保できる手段です。特に技術継承・品質管理・営業経験が重要な職種では、シニア人材の活躍が組織に大きな価値をもたらします。

パート・契約・副業の活用:業務のうち一部をパート・契約社員や副業人材で担うことで、正社員採用のプレッシャーを下げながら人員需要に対応できます。DX・マーケティング・採用広報など、スポット的に高度なスキルが必要な業務は、副業人材の活用が特に向いています。

こうした「採用以外の選択肢」を人員計画に組み込むことで、採用コストの効率化と組織の柔軟性が高まります。


人員計画の精度を上げる「定点観測」の仕組み

人員計画を一度作って終わりにせず、定期的に見直す仕組みを作ることが重要です。

月次:採用進捗・離職発生の確認 四半期:人員充足率・採用コストの集計 年次:人員計画と事業計画の照合・次年度計画の更新

この定点観測のサイクルを回すことで、「想定外の離職が出た」「採用計画が3ヶ月遅延している」といった問題に早期に気づき、手を打つことができます。


中国・四国特有の「技術継承リスク」を人員計画に組み込む

広島・山口の鉄鋼・造船関連産業、愛媛・高知の水産加工業、岡山の農業機械産業——これらの分野に共通するのが「熟練技術者の高齢化と技術継承リスク」です。

現場で30〜40年の経験を積んだベテランが退職した後、その技術をどう次世代に引き継ぐかは、採用計画と同時に人員計画に組み込む必要があります。

具体的には、「重要な技術を持つ人材の年齢分布と退職予定」をマッピングし、「退職前の3年間をどう技術継承期間として活用するか」の計画を立てることが重要です。技術継承のための「副担当制」(ベテランと若手がペアで業務に当たる仕組み)を採用・配置計画に反映させることで、突然の技術空洞を防ぐことができます。

鳥取の造船関連会社では、この「技術継承マップ」を人員計画の一部として経営会議に提示することで、「あと3年以内に手を打たないと、この部門の技術が失われる」というリスクを経営者が具体的に認識し、早期採用・育成への投資承認を得ることができました。


人員計画を「年1回の儀式」にしない

多くの企業では、人員計画が「期初に作って、あとはあまり更新されない」という状況に陥っています。しかし、経営環境の変化・離職の発生・新事業の動向は、年間を通じて常に変化します。

人員計画を「生きた文書」として運用するには、四半期ごとの見直しと、経営会議での定期的な共有が有効です。「計画と実績の乖離がどこで・なぜ起きているか」を毎回確認することで、次の手を早めに打つことができます。


「経営に近い人事」になるために

人員計画の設計は、人事担当者が「手続きをこなす人」から「経営に参加する人」に変わるための一番分かりやすいステップです。

事業を理解し、数字で語り、将来のリスクを予測して手を打つ——これは経営者がやっていることと本質的に同じです。中国・四国という地域で、経営者との距離が近い中小企業の人事担当者だからこそ、その実践の機会は豊富にあります。

人員計画という地味な仕事を丁寧に積み上げることが、5年後の「この地域の産業を人事から変えた」という実績につながっていきます。


人員計画と事業の成長戦略を接続する

人員計画が「単なる採用予定数の一覧」にならないためには、「事業の成長戦略とどう接続されているか」が重要です。

中国・四国の中小企業の中には、「成長したい」「新しい市場に出たい」「製品のラインナップを広げたい」という経営意志を持ちながら、「人がいないからできない」という壁に何年も直面している企業があります。この「ビジョンと人材の乖離」は、人員計画が経営計画から切り離されていることの現れです。

逆に、「3年後に売上を20%伸ばすために、どんな人材が何名必要か」を経営計画と連動させて人員計画を立てている企業では、「採用が遅れると事業計画が遅れる」という危機感が経営者に共有され、採用への投資承認が早い傾向があります。

人員計画を経営計画のページに並べて提示する——その習慣を作ることが、人事を経営の中心に据えるための最も実践的なステップのひとつです。


データがない状態から人員計画を始める方法

「人員計画を作りたいが、データが整っていない」という声はよく聞きます。完璧なデータが揃うまで待つのではなく、「今あるデータで始める」という姿勢が重要です。

エクセルで現在の社員リスト(氏名・年齢・職種・入社年・勤務地)を作るだけでも、「年齢分布の偏り」「特定職種の充足状況」は見えてきます。そこに過去3年の離職者数を加えれば、離職傾向も分かります。まず「現状を見える化する」ことから始め、データの精度は徐々に上げていくという進め方が、実務では現実的です。


人員計画で「人材の多様性」を意識する

人員計画を立てる際、「何名必要か」だけでなく「どんな多様性が組織に必要か」も考慮することが、中長期的な組織の強さにつながります。

年齢構成の偏り(若手ばかり・ベテランばかり)、性別・雇用形態・出身地の偏り——これらが極端な場合、特定のリスク(集団離職・技術断絶・視野の偏り)が生まれやすくなります。人員計画の中に「5年後の組織の多様性の目標像」を含めることで、採用・育成の方向性に一貫性が生まれます。

中国・四国の製造業で「30代女性の管理職を増やす」という目標を人員計画に組み込んだ企業では、採用の段階から「女性が活躍できる職場環境整備」を並行して進めるきっかけになったという事例があります。人員計画は「人数合わせ」ではなく、「どんな組織を作るか」の設計図です。


「人員計画を作ること」自体が学習の機会

人員計画の作成プロセスを通じて、人事担当者自身が「事業への理解」「経営数字への感覚」「経営者との対話力」を鍛えることができます。数字を集め、分析し、経営者に提案するという一連の作業は、人事担当者が経営視点を身につける実践的な場です。完璧な計画を最初から目指さず、「作りながら学ぶ」という姿勢で、毎年少しずつ精度を上げていく。その積み重ねが、人事担当者としての価値を高めていきます。


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