島根・鳥取の企業が人口減少地域で人材を確保する方法——中国・四国で人事に取り組む方へ
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島根・鳥取の企業が人口減少地域で人材を確保する方法——中国・四国で人事に取り組む方へ

#採用#研修#組織開発#経営参画#キャリア

島根・鳥取の企業が人口減少地域で人材を確保する方法——中国・四国で人事に取り組む方へ

「来年、うちの町から高校がなくなる」。島根県のある企業の人事担当者Eさんが、ぽつりとこぼした一言が忘れられません。

その町には、Eさんが働く建材メーカーがあり、従業員は約40名。毎年2〜3名の新卒採用を行ってきましたが、地元高校の統廃合により、そもそも「地元の若者」がいなくなりつつある。中途採用に切り替えようにも、人材紹介会社に登録している島根県在住の求職者は限られている。「このままでは5年後、工場を回す人がいなくなる」——Eさんの危機感は切実なものでした。

島根県と鳥取県は、日本で最も人口減少が進んでいる地域のひとつです。2024年の推計で、島根県の人口は約65万人、鳥取県は約54万人。いずれも高齢化率は35%を超え、15〜64歳の生産年齢人口は年々減少しています。この現実の中で、企業が人材を確保し続けるためには、従来の採用の延長線上にはない発想が必要です。

私はこれまで500社以上の企業の人事課題に向き合ってきましたが、人口減少地域での人材確保は、「採用の工夫」だけでは解決しない構造的な問題を含んでいます。この記事では、島根・鳥取の企業が直面する課題を正面から見据えながら、実践可能なアプローチを整理します。


人口減少地域の採用を取り巻く「3つの構造」

島根・鳥取の企業が人材確保に苦戦する背景には、3つの構造的な要因があります。

構造1:若年人口の絶対的な不足

高校卒業後に県外に進学・就職する若者の割合が高く、「地元に残る」若者の数自体が減り続けています。島根県の18歳人口は2010年の約7,500人から2024年には約5,800人にまで減少しました。この傾向は今後も続きます。つまり、「地元採用」だけに頼る限り、母集団は縮小し続けるということです。

構造2:転職市場の「薄さ」

都市部では転職エージェントやダイレクトリクルーティングが活発ですが、島根・鳥取では「転職市場に出てくる人材」自体が少ない。一つの求人に対して応募者がゼロということも珍しくありません。そもそも、地域内での転職を考える人が少なく、「今の会社に不満はあるが、他に選択肢がないから残っている」という消極的定着も多い。

構造3:UIターンの壁

UIターン採用は有力な選択肢ですが、「移住」という大きな決断を伴うため、採用のハードルが高い。配偶者の仕事、子どもの学校、親の介護、住居——移住には多くの不安要素があり、「仕事が見つかれば移住する」という単純な話ではありません。企業側がこの不安にどこまで寄り添えるかが、UIターン採用の成否を分けます。


「人がいないなら仕方ない」で終わらせないために

人口減少地域で人材確保の話をすると、「うちは田舎だから仕方ない」という諦めの声を聞くことがあります。その気持ちはわかります。しかし、諦めた瞬間から組織は縮小していきます。

重要なのは、「人材確保」を単なる採用活動として捉えるのではなく、経営戦略の中核に位置づけることです。人がいなければ事業は回りません。事業が回らなければ売上は下がります。売上が下がれば、さらに人材を採用する余力がなくなる——この負のスパイラルを断ち切るために、人材確保に経営資源を集中的に投下する判断が必要です。

経営数字で考えてみましょう。従業員40名の企業で、必要な人員が確保できず年間売上が10%減少した場合、その損失額はどの程度か。年商5億円なら5,000万円です。一方、UIターン採用に力を入れるための追加コスト——移住支援、採用広報、住居手当——が年間300万円だとすれば、投資としての合理性は明らかです。


島根・鳥取の企業が取り組める6つのアプローチ

人口減少地域での人材確保には、複数のアプローチを組み合わせる「複線的な戦略」が必要です。以下の6つは、島根・鳥取の企業の文脈で実践しやすいものです。

アプローチ1:UIターン採用の本気度を上げる

UIターン採用を「やっている」企業は多いですが、「本気でやっている」企業は少ない。本気度の差は、以下のような具体的な取り組みに表れます。

移住前の「お試し勤務制度」を設ける。1〜2週間、実際に働きながら地域の暮らしを体験できる仕組みです。交通費・宿泊費を会社が負担し、仕事内容だけでなく「この地域で暮らすイメージ」を持ってもらう。島根県出雲市のある食品メーカーでは、この「お試し勤務」を導入してから、UIターン採用の内定承諾率が40%から75%に向上しました。

配偶者の就職支援を行う。UIターンの最大の壁のひとつが「配偶者の仕事」です。「自分は転職先が決まったが、パートナーの仕事がない」という理由で移住を断念するケースは多い。地域の企業ネットワークを活用して、配偶者の就職先を紹介するサポートを行う企業は、UIターン採用において大きなアドバンテージを持ちます。

アプローチ2:リモートワーク可能な業務を切り出す

製造業や建設業のように、現場での業務が中心の企業でも、「すべての業務が現場でなければできない」わけではありません。設計、品質管理の書類作成、営業の一部、経理、人事——これらはリモートでも遂行できる可能性があります。

完全リモートではなくても、「週3日出社・週2日リモート」というハイブリッド型であれば、通勤圏を広げることができます。鳥取県内の企業で、隣県の岡山市在住者を「週2日出社」で採用したケースでは、従来の採用圏では出会えなかった優秀な人材を獲得できたという事例があります。

アプローチ3:シニア人材・ミドル層の活用を再設計する

定年退職後のシニア人材や、子育てが一段落した40〜50代のミドル層は、地域に眠っている「活用されていない人材プール」です。

フルタイムでの就労が難しい場合でも、短時間勤務・週3日勤務・特定の業務だけを担当するといった柔軟な働き方を提供することで、経験豊富な人材を確保できます。島根県松江市のあるIT企業では、育児中の女性エンジニアを「週4日・1日6時間」という条件で採用し、現在チームの中核メンバーとして活躍してもらっています。

アプローチ4:外国人材の受け入れ体制を整える

技能実習制度や特定技能制度を活用した外国人材の受け入れは、人口減少地域での人材確保において現実的な選択肢です。ただし、「安い労働力」として外国人材を捉えている限り、定着は期待できません。

生活支援、日本語教育、職場でのコミュニケーション体制、キャリアパスの提示——これらを整備した上で、「一緒に働く仲間」として外国人材を迎え入れる企業は、長期的に見て人材が定着しやすい。鳥取県のある農業法人では、ベトナム出身の技能実習生5名を「将来の幹部候補」として育成しており、2名が特定技能に移行して3年以上定着しています。

アプローチ5:地域の教育機関との連携を深める

島根大学、鳥取大学、松江高専、米子高専——地域の教育機関との関係を強化することは、中長期的な人材パイプラインの構築につながります。

インターンシップの受け入れ、授業への講師派遣、共同研究——これらを通じて「この地域にこんな面白い企業がある」という認知を学生に持ってもらう。特に高専生は即戦力として期待できる人材であり、高専との連携を重視する企業は多い。松江高専のある教授に聞いた話では、「学生がインターンで行って『ここで働きたい』と感じた企業には、高い確率で就職する」とのことでした。

アプローチ6:「辞めさせない」ことへの投資を強化する

人口減少地域では、新規採用の難しさを考えると、「今いる社員を辞めさせない」ことの経済的価値が非常に高い。定着率を5%改善することで回避できる採用コスト・教育コスト・機会損失は、数百万円規模になります。

働きやすさの改善(残業削減、有休取得促進、柔軟な勤務体制)、成長機会の提供(研修、資格取得支援)、上司のマネジメント力向上——これらの取り組みを「定着率改善→採用コスト削減→経営へのインパクト」という数字で整理し、経営者に提案することで、投資の承認を得やすくなります。


島根・鳥取ならではの「地域の魅力」を採用に活かす

人口減少地域での採用は暗い話ばかりではありません。島根・鳥取には、都市部にはない魅力があります。その魅力を正直に、具体的に伝えることが、UIターン採用の鍵になります。

たとえば、自然環境の豊かさ。大山、宍道湖、日本海——これらの自然を日常的に楽しめる暮らしは、都市部で疲弊しているビジネスパーソンにとって大きな魅力です。「朝、サーフィンしてから出社できる」「週末は大山でスキー」——こうした具体的な生活イメージを採用コンテンツに組み込んでいる企業は、UIターン人材の興味を引きやすい。

コミュニティの温かさ。移住者にとって最も心配なのは「地域に馴染めるか」です。移住者を歓迎するコミュニティ、先輩移住者とのつながり、地域の祭りや行事への参加機会——これらの情報を提供することで、移住への心理的ハードルが下がります。

生活コストの低さ。家賃は都市部の半額以下、食費も安い、通勤ストレスがない。年収が100万円下がっても、可処分所得はむしろ増えるケースも珍しくありません。この「実質的な生活の豊かさ」を具体的な数字で示すことが、都市部の求職者に対する説得力を持ちます。


行政・地域との連携で採用力を補完する

島根・鳥取の企業が単独で採用力を強化するには限界があります。行政や地域の支援制度を活用することで、企業単独ではできないアプローチが可能になります。

しまね定住財団、ふるさと鳥取県定住機構、各自治体の移住支援制度——これらは単なる補助金の窓口ではなく、UIターン希望者と企業のマッチング機能を持っています。定期的に情報交換を行い、「うちはこんな人材を求めている」という情報を共有しておくことで、マッチングの精度が上がります。

東京・大阪で開催されるUIターンフェアへの出展も有効です。ただし、「ブースを出して待つ」だけでは効果は限定的。事前にSNSや自社サイトで参加を告知し、興味を持った人と事前にコンタクトを取っておくことで、当日の面談の質が変わります。


「省人化」と「人材確保」を同時に考える

人口減少地域で人材確保に取り組む際、「すべての業務を人で回す」前提を疑うことも必要です。自動化・デジタル化・外注化によって「人がやらなくてもいい仕事」を減らし、「人にしかできない仕事」に人材を集中させる——この発想が、人口減少時代の人事戦略には不可欠です。

製造現場であれば、検品工程の画像認識AI導入、在庫管理の自動化、事務作業のRPA化——こうした投資によって、「今の人員で今以上の生産性を出す」ことが可能になります。その結果として「あと2名多く採用しなければならなかったのが、現状の人員で回せるようになった」という状態を作れれば、人材確保のプレッシャーが軽減されます。

ただし、省人化の議論は「人を減らすための施策」として社員に受け取られるリスクがあります。人事担当者が「省人化は既存社員の仕事を奪うものではなく、一人ひとりがより価値の高い仕事に集中するための取り組みである」というメッセージを丁寧に発信することが大切です。


人口減少を「経営リスク」として認識する

島根・鳥取の企業にとって、人口減少は「いつか来る問題」ではなく「今まさに起きている経営リスク」です。このリスクを経営計画に織り込むことが、人事担当者の重要な仕事になります。

具体的には、「3年後・5年後の退職見込み数」「同時期の地域の労働人口予測」「採用市場の見通し」を数値化し、経営者に提示する。「5年後に現場のベテラン5名が定年を迎えますが、現在の採用ペースでは3名しか補充できません。このギャップを埋めるために、今から以下の施策が必要です」——こうした提案ができる人事担当者は、経営者から信頼されます。

人口減少は変えられません。しかし、その中でどう人材を確保し、組織を維持・発展させるかは、人事の打ち手次第です。「地方だから仕方ない」を「地方だからこそ工夫する」に変えること。それが、島根・鳥取で人事に取り組む方に求められている姿勢だと思います。


10年後を見据えた人材戦略を描く

島根・鳥取の企業が目先の採用に追われるだけでなく、10年後の組織像を描くことが重要です。10年後、自社の事業はどうなっているか。どんなスキルを持った人材が何名必要か。その人材をどう確保するか。

この問いに向き合うことは、人事担当者だけの仕事ではありません。経営者と一緒に考え、中長期の人材戦略を経営計画に組み込むことで、「計画的な人材確保」が可能になります。

人口減少地域で事業を続けるという判断をした以上、その地域の現実を受け入れた上で、最善の人材戦略を構築する。それは簡単なことではありませんが、この地域で事業を続ける覚悟を持った経営者と人事担当者にとって、最もやりがいのある仕事のひとつではないでしょうか。


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