中国・四国の建設業が人手不足を乗り越えるための人事戦略——中国・四国で人事に取り組む方へ
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中国・四国の建設業が人手不足を乗り越えるための人事戦略——中国・四国で人事に取り組む方へ

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中国・四国の建設業が人手不足を乗り越えるための人事戦略——中国・四国で人事に取り組む方へ

「現場に出る人が、あと5人足りない」。この言葉を、中国・四国の建設会社の経営者からどれだけ聞いたかわかりません。

広島の道路建設、岡山の河川整備、島根の橋梁補修、愛媛の港湾工事、高知の防災インフラ——中国・四国の建設業は、地域のインフラを守る不可欠な存在です。しかし、その担い手が圧倒的に足りていない。国土交通省の統計によれば、建設業就業者の約35%が55歳以上で、29歳以下は約10%。この年齢構成が意味するのは、10年後に現在の熟練技能者の大半が退職するという現実です。

私がこれまで500社以上の企業で人事の課題に向き合ってきた中で、建設業の人手不足は最も構造的で深刻な課題のひとつです。しかし同時に、「人事の力で状況を変えられる余地が最も大きい業界」でもあると感じています。なぜなら、建設業の多くの企業はまだ「人事」という機能を本格的に持っていないからです。


建設業の人手不足が「構造的」である理由

建設業の人手不足は、景気の波による一時的なものではありません。以下の3つの構造が重なっています。

構造1:高齢化と世代断絶

現在の建設現場は、50〜60代のベテラン職人と、入社間もない20代の若手で構成されていることが多く、30〜40代の「中間層」が極端に少ない。これは、バブル崩壊後からリーマンショック期にかけて新規採用を大幅に絞った結果です。この世代の断絶は、技術承継の観点からも深刻な問題を引き起こしています。

構造2:若年層の建設業離れ

「きつい・汚い・危険」の3Kイメージが若者の建設業離れを加速させています。実際には、ICT施工やドローン活用など、建設現場のテクノロジー化は進んでいますが、その変化が若者に伝わっていない。高校の進路指導の場で、建設業がポジティブに紹介されることは稀です。

構造3:2024年問題の影響

2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました。これまで「残業で回していた」現場は、同じ人数では同じ工事量をこなせなくなっています。つまり、人手不足がさらに深刻化する構造です。

中国・四国の建設業では、これらの構造に加えて「地域の人口減少」という要因が重なります。都市部の建設会社が採用に苦戦する以上に、中国・四国の建設会社は深刻な状況にあります。


経営数字から見る人手不足のインパクト

人手不足を「現場が回らない」という感覚で捉えるのではなく、経営数字で把握することが重要です。

中国・四国のある道路建設会社(従業員60名、年商12億円)では、人手不足により年間3件の工事案件を受注辞退していました。1件あたりの平均売上が5,000万円とすると、年間1.5億円の機会損失です。年商12億円の会社にとって、12.5%の売上機会を逃しているということです。

一方、技術者を1名追加で採用した場合の年間コストは、給与・社会保険・装備費等を含めて約550万円。1名の技術者がいれば、少なくとも1件の追加工事を受注できる計算です。投資対効果は約9倍。

この数字を経営者に提示することで、「採用にコストをかけることは投資である」という認識を共有できます。


建設業の人事が取り組むべき5つの戦略

中国・四国の建設業が人手不足を乗り越えるための人事戦略を5つ整理します。

戦略1:採用の「入口」を広げる

建設業の採用は、これまでハローワークと縁故採用に頼る割合が高かった。しかし、この2つのチャネルだけでは母集団が限られています。

地元の工業高校・高専との関係強化、職業訓練校との連携、自衛隊退職者の受け入れ、女性技術者の採用、外国人材の活用——採用の入口を多角化することで、母集団を拡大できます。

広島県内のある建設会社では、自衛隊の退職予定者向け説明会に参加し、3年間で5名の元自衛官を採用しました。自衛隊で培った体力・規律・チームワークが建設現場で活かされ、いずれも高い評価を得ているそうです。

戦略2:「建設業のイメージ」を変える採用広報

若者が建設業に魅力を感じない最大の理由は「知らないから」です。最新のICT施工、ドローン測量、3D設計——建設現場のテクノロジー化は著しく進んでいますが、それが若者に伝わっていない。

SNSや動画を活用して、「かっこいい建設現場」のリアルを発信する。ドローンが飛ぶ現場の映像、ICT建機のオペレーション、完成した橋を渡る瞬間——こうしたビジュアルコンテンツは、若者の「建設業のイメージ」を変える力があります。

岡山のある建設会社では、若手社員が現場の作業風景を毎日TikTokに投稿しています。「建設現場の日常」を見た高校生からのDMがきっかけで、2名の新卒採用につながったそうです。

戦略3:給与・待遇の改善を「見える化」する

建設業の給与水準は、全産業平均と比較して必ずしも低くはありません。しかし、「建設業は給料が安い」というイメージが根強い。実際には、技能者のレベルに応じて年収500万〜700万円台も可能であることが、求職者に伝わっていない。

建設キャリアアップシステム(CCUS)を活用し、技能レベルに応じた処遇の見える化を進めることで、「建設業で働けば、これだけの報酬が得られる」というキャリアパスを示すことができます。

また、週休2日制の導入は、若手の採用において「最低条件」になりつつあります。4週8休を実現している企業は、採用において明確なアドバンテージを持ちます。

戦略4:技術承継の仕組みを作る

ベテラン技能者の退職が迫る中で、その技術をどう若手に承継するかは喫緊の課題です。「背中を見て覚えろ」では、技術の承継は間に合いません。

技術承継を仕組み化するためのアプローチとして、「ベテランの技術を動画で記録する」「チェックリスト化して標準化する」「段階的なOJTプログラムを設計する」の3つが有効です。

山口県のある建設会社では、ベテランの鉄筋工の作業を4Kカメラで撮影し、教材として整理するプロジェクトを進めています。ベテラン自身も「自分の技術が残る」ということに誇りを感じており、協力的だそうです。

戦略5:多能工化で人員効率を上げる

一人の技能者が複数の工種をこなせる「多能工」の育成は、少ない人員で現場を回すための現実的な戦略です。

多能工化を進めるためには、計画的なジョブローテーションと、それを支える評価制度が必要です。「複数の工種ができる人材を正当に評価する」制度があれば、技能者のスキルアップ意欲が高まり、組織全体の柔軟性も向上します。


女性技術者の採用と活躍支援

建設業における女性技術者の割合は約5%にとどまっています。しかし、この数字は「ポテンシャルが大きい」ということでもあります。

女性が建設業で働くための環境整備——女性用トイレ・更衣室の設置、ハラスメント防止の徹底、育児と両立できる勤務体制——これらは「女性のため」だけでなく、「すべての従業員にとって働きやすい環境」を作ることにつながります。

愛媛県のある建設会社では、女性の現場監督を3名採用し、「建設女子」としてSNSで発信しています。この取り組みが地元メディアに取り上げられ、「建設業で働く女性がいるんだ」という認知が広がり、翌年の女性応募者が3倍になったそうです。


外国人材の活用を「戦力化」の視点で

建設業における外国人材の受け入れは、特定技能制度の拡充により選択肢が広がっています。しかし、「安い労働力の確保」という発想で外国人材を受け入れる限り、長期的な戦力にはなりません。

外国人材を「将来の中核メンバー」として育成する視点で受け入れ体制を整えることが重要です。日本語教育、安全教育、技術教育を体系化し、キャリアパスを提示する。

島根県のある建設会社では、ベトナム出身の技能者3名に対して「5年後に現場リーダーになる」というキャリアプランを示し、計画的な育成を行っています。3年目の現在、うち1名はすでに小規模現場の作業班長を任されるまでに成長しているそうです。


建設業における「働き方改革」の現実

2024年問題以降、建設業の働き方改革は待ったなしの状況です。しかし、現場の実態は「制度は変わったが、現場が追いついていない」というケースが多い。

残業を減らすためには、「残業をしないでも工事が回る仕組み」を作る必要があります。ICT施工の導入による生産性向上、工程管理の精度向上、協力会社との連携強化——これらの取り組みと人事戦略を連動させることで、「少ない人数で、短い時間で、同じ品質の工事を完成させる」ことが可能になります。

人事担当者の仕事は、「残業を減らせ」と現場に言うことではありません。「残業を減らしても事業が回る仕組み」を経営者・現場管理者と一緒に考えることです。


建設業の「人事」は経営そのもの

中国・四国の建設業において、人材の確保・育成・定着は、もはや人事部門だけの課題ではなく、経営の根幹に関わる問題です。

人がいなければ工事は受注できない。工事が受注できなければ売上は立たない。売上が立たなければ、人材への投資もできない。この負のスパイラルを断ち切るために、人事戦略を経営戦略の中核に位置づけることが必要です。

「とりあえずハローワークに求人を出す」という時代は終わりました。採用チャネルの多角化、採用ブランディング、処遇改善、技術承継、働き方改革——これらを一体的に設計し、実行できる人事の力が、中国・四国の建設業の未来を左右します。


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