中国・四国の企業がテレワークとオフィスのハイブリッド型を設計する方法——中国・四国で人事に取り組む方へ
制度設計・運用

中国・四国の企業がテレワークとオフィスのハイブリッド型を設計する方法——中国・四国で人事に取り組む方へ

#1on1#採用#評価#組織開発#経営参画

中国・四国の企業がテレワークとオフィスのハイブリッド型を設計する方法——中国・四国で人事に取り組む方へ

「テレワークを続けたいという社員と、オフィスに戻りたいという社員がいて、どうすればいいかわからない」。広島のある中堅IT企業の経営者から、こんな相談を受けました。

コロナ禍をきっかけにテレワークを導入した企業は、中国・四国でも少なくありません。しかし、コロナの影響が落ち着いた今、「全員テレワーク」でも「全員オフィス」でもない、「ハイブリッド型」の働き方をどう設計するかが、多くの企業の課題になっています。

その広島のIT企業では、コロナ禍中に全社員をフルリモートに移行し、生産性は維持できていました。しかし、オフィス出社が再開すると、若手社員から「先輩に気軽に相談できるのでオフィスがいい」、子育て中の社員から「通勤時間がなくなって助かるのでテレワークを続けたい」、管理職から「部下の仕事ぶりが見えないのが不安」——三者三様の声が出てきた。

「全員にとって最適な解」は存在しません。しかし、「自社に合ったバランス」を見つけることは可能です。

私はこれまで500社以上の企業の人事課題に向き合ってきましたが、ハイブリッドワークの成否は「制度の設計」と「運用のルール」の両方にかかっています。この記事では、中国・四国の企業がハイブリッドワークを適切に設計するための方法を、経営数字の視点から考えていきます。


ハイブリッドワークの経営効果を数字で見る

ハイブリッドワークの導入が経営に与える影響を整理します。

採用競争力の向上:「テレワーク可」「ハイブリッドワーク可」は、特に若手世代やIT人材にとって重要な選社基準です。パーソル総合研究所の調査では、テレワーク実施企業の方が採用力が高い傾向が示されています。中国・四国の中小企業が「週2日テレワーク可」とするだけで、都市部のリモートワーク希望者にもリーチできるようになります。

離職率の改善:ワークライフバランスの改善による離職率の低下。特に、育児や介護を理由とした離職を防ぐ効果があります。年間2名の離職が1名に減れば、150万円の採用・育成コスト削減。

オフィスコストの削減:全員が毎日出社しない前提でオフィス面積を縮小できれば、賃料の削減が可能。広島市中心部のオフィス賃料が月50万円だった企業が、面積を70%に縮小し月35万円にできれば、年間180万円の削減です。

通勤手当の見直し:テレワーク日数に応じて通勤手当を実費精算にすることで、固定的な通勤手当の削減が可能。社員50名、平均月額通勤手当1.5万円の企業が週2日テレワークにした場合、理論上は月30万円(年間360万円)の削減余地があります(ただし、テレワーク手当との差し引きが必要)。

一方で、ハイブリッドワークにはコストもかかります。

IT環境の整備:ノートPC、VPN、クラウドツールの導入費用。社員1名あたり10〜20万円の初期投資。50名の企業で500〜1,000万円。 テレワーク手当:在宅勤務にかかる光熱費やインターネット代の補助。月2,000〜5,000円が相場。50名×月3,000円×12ヶ月=180万円。 コミュニケーションツール:Slack、Microsoft Teams、Zoomなどの利用料。年間50〜100万円。


ハイブリッドワークの設計——4つのモデル

ハイブリッドワークの設計にはいくつかのパターンがあります。自社に合ったモデルを選ぶことが重要です。

モデル1:固定曜日型

「月・水・金は出社、火・木はテレワーク可」のように、全社で出社日とテレワーク日を固定するモデル。

メリット:管理がシンプル。出社日には全員が揃うため、対面でのコミュニケーションが取りやすい。 デメリット:個人の事情(通院、子どもの行事など)に柔軟に対応しにくい。

モデル2:日数指定型

「週3日以上出社」のように、出社日数だけを指定し、どの曜日に出社するかは個人に任せるモデル。

メリット:個人の自律性が高い。それぞれの事情に合わせた柔軟な働き方が可能。 デメリット:「今日はオフィスに誰がいるかわからない」状態になりやすい。対面で話したい相手が出社していない、ということが起きる。

モデル3:チーム裁量型

出社ルールをチーム(部署)ごとに決めるモデル。営業チームは「月・水出社」、開発チームは「火のみ出社」など。

メリット:チームの業務特性に合わせた設計が可能。チーム内のコミュニケーションは確保しやすい。 デメリット:部署間のルールの違いが「不公平感」を生む可能性がある。

モデル4:業務内容型

「集中作業はテレワーク、打ち合わせ・ブレストは出社」のように、業務の内容に応じて出社・テレワークを使い分けるモデル。

メリット:業務の生産性を最大化できる。 デメリット:ルールが曖昧になりやすく、運用が属人的になるリスク。

中国・四国の中小企業(50〜100名規模)には、モデル1かモデル3が適しているケースが多いです。管理のしやすさと、ある程度の柔軟性を両立できるためです。


ハイブリッドワークの運用ルール

制度の設計と同時に、運用のルールを明確にすることが重要です。

勤怠管理のルール

テレワーク時の勤怠管理は、「始業・終業の連絡」をSlackやメールで行うシンプルな方法で十分です。PCのログイン・ログアウト時間を自動記録するツールを導入する企業もありますが、中小企業では過度な監視ツールは逆効果。「信頼ベース」の運用が適しています。

ただし、残業管理は注意が必要です。テレワークは「いつでも仕事ができる」ため、知らず知らずのうちに長時間労働になるリスクがある。「20時以降のメール・チャットの禁止」「テレワーク日も残業は事前申請制」などのルールを設ける。

コミュニケーションのルール

非同期コミュニケーションの活用:テレワーク時は「今すぐ返事をもらう」ことが難しい場合がある。チャットでの連絡は「緊急でなければ2時間以内の返信」「急ぎの場合は電話」など、コミュニケーションの優先度ルールを決める。

定例ミーティングの設定:チーム内の「週次ミーティング」は出社日に対面で行う。これにより、テレワーク日は個人作業に集中し、出社日はコミュニケーションに充てるというメリハリが生まれる。

雑談の時間を意図的に作る:テレワークでは「偶然の雑談」がなくなる。オンライン上に「雑談チャンネル」を設けたり、週に1回15分の「オンラインコーヒーブレイク」を設定するなど、意図的に雑談の機会を作る。

島根のあるソフトウェア企業(従業員25名)では、毎朝10分のオンライン朝会を全社で実施しています。業務連絡だけでなく、「昨日の晩ごはんは何でしたか?」といった軽い質問からスタート。この「ゆるい接点」が、テレワーク中の孤立感を防いでいると好評です。

評価のルール

テレワークで最も懸念されるのが「見えない不安」——管理職が「部下が何をしているかわからない」と感じることです。この不安は、「成果ベースの評価」に移行することで解消できます。

「何時間働いたか」ではなく「何を達成したか」で評価する。そのためには、期初に明確な目標を設定し、定期的に進捗を確認するプロセスが必要です。1on1ミーティング(月2〜4回、各30分)を通じて、目標の進捗確認とフィードバックを行う。


中国・四国ならではのハイブリッドワークの可能性

中国・四国の地域特性を活かしたハイブリッドワークの形があります。

ワーケーションとの組み合わせ

瀬戸内海の島々、四万十川の清流、大山の自然——中国・四国には「仕事と余暇を組み合わせる」のに最適な環境があります。「週3日はオフィス出社、残り2日は瀬戸内の島で」というワーケーションスタイルは、この地域ならではの働き方です。

サテライトオフィスの活用

徳島県神山町、島根県海士町など、中国・四国にはサテライトオフィスを誘致している自治体があります。本社が広島にある企業の社員が、週に数日は地方のサテライトオフィスで働く。通勤時間の短縮と自然環境の中での仕事が、創造性を高めるという報告もあります。

UIターン人材の採用チャネルとしての活用

「完全出社」を条件にすると、通勤圏内に住む人材しか採用できません。しかし、「週2日テレワーク可」とすれば、通勤圏がぐっと広がる。さらに「月数回の出社でOK」とすれば、東京や大阪に住みながら中国・四国の企業で働くことも可能になります。

愛媛のあるメーカーでは、東京在住のマーケティング担当者を「月2回出社」の条件で採用しました。月2回の出社日に集中的に対面ミーティングを行い、それ以外はリモートで業務を遂行。地元では見つからなかった専門人材を確保でき、採用コストも東京のエージェントを使うよりも抑えられたそうです。


ハイブリッドワーク導入のステップ

ステップ1:現状分析

まず、自社の業務のうち「テレワーク可能な業務」と「出社が必要な業務」を仕分けする。製造現場の作業はテレワークできませんが、経理、営業事務、企画、IT開発などはテレワーク可能な場合が多い。

ステップ2:トライアル実施

いきなり全社導入するのではなく、特定の部署で3ヶ月間のトライアルを実施する。トライアル中に「うまくいったこと」「課題になったこと」を洗い出し、全社展開前に制度を修正する。

ステップ3:ルール策定と全社展開

トライアルの結果を踏まえてルールを策定し、全社に展開する。就業規則の変更が必要な場合は、労使協定の締結も行う。

ステップ4:定期的な見直し

半年に1回、ハイブリッドワークの運用状況をレビューする。社員アンケートを実施し、「テレワークの頻度は適切か」「コミュニケーションに問題はないか」を確認する。結果に基づいてルールを微調整する。


まとめ

ハイブリッドワークは「テレワークか出社か」の二者択一ではなく、両方の良さを組み合わせる「第三の選択肢」です。出社日には対面でのコミュニケーションを充実させ、テレワーク日には集中作業の生産性を高める。このメリハリが、組織の生産性とメンバーの満足度を両立させます。

中国・四国の企業にとって、ハイブリッドワークは「人材確保の武器」にもなります。完全出社を求めると通勤圏内の限られた人材しか採用できませんが、テレワークを組み合わせれば、採用の対象が全国に広がる。

大切なのは「自社に合った形」を見つけること。他社の事例をそのまま真似するのではなく、自社の業務特性、社員の構成、地域の環境を踏まえて、ハイブリッドワークの「自社モデル」を設計する。試しながら修正し、少しずつ最適な形に近づけていく。その地道なプロセスが、中国・四国の企業の新しい働き方を切り拓いていくのだと、私は考えています。

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